敵が味方に変わる時
焔は、さっと後ろを向き右の刀で澪の鎌を止める。
「早いが、隙だらけだろ。」
「その言葉お返ししますね。焔さん」
そういいながら澪は微笑んだ。
次の瞬間、焔の身体は冷たい空気に覆われ始めた。
鎌に触れた刀の部分からどんどん凍り始めていた。
焔は何度も炎で溶かそうとしたが、冷たい空気は身体を離れず、体力を奪ってゆく・・・。
(闘技場入口)
「田舎者のガキどもが入るところじゃねーんだよ!さっさとおうちに帰りな。」
雷と楓は入り口の用心棒に入場拒否されていた。
「・・・楓。」
「何?」
「こいつ。殺っちゃっていい?」
「やれるもんならやってみろよ!俺に勝ったら入らせてやるよ!」
すると、雷は目の色を変え、いきなり用心棒に飛びつき、顔面に思いっきりこぶしを振り下ろした。
何度も
何度も
「これなら文句ないよな。入ろうぜ!」
「もうそのくらいでいいと思うよ。雷・・・」
(地下闘技場 リング)
冷たい空気に体力を捕られながらも、焔は刀を放さず、攻撃する機会を狙うかのように鋭い目で澪を睨んでいた。
「楽しい戦いをありがとな。澪、さようなら!」
そういうと、焔の刀は黒い炎に包まれ形を変形させていく・・・
焔は刀の持ち方を変えると腕を横に広げてこういった・・・
「全てを切り裂け!黒龍!」
その言葉と同時に腕を高速で前に向けて振り込んだ。
その頃、楓と雷は、リング近くで見ようと人の波を掻き分けて前に進もうとしていた。
「楓!伏せろ!」
雷の言葉に驚きながらも、楓はその場で頭を抱えながらしゃがみ座った。
するとその上を黒く大きな物体がものすごい勢いで通過していく。
ふと、横を見るとそこらじゅうで血の海ができている。
何が起きたのか楓はすぐに理解ができた。
数秒後、同じ方向に次々と観客は倒れていった・・・。
リング上では、焔がふらふらになりながらもその場で立っていた。
しかし、目の前に澪の姿はない。
その時、焔の視界に白い何かが入った。
それは、澪の2つの大鎌の刃だった。
「うそ・・・だろ・・・」
そういうと、焔はその場で気を失ってしまった・・・。
焔が目を覚ますと、そこは救護室だった。
「まだ動かないほうが良いですよ。」
そこには、フードを被った男が包帯を持って立っていた。
「お前誰だ?」
「僕は楓・・・。」
「俺は焔だ。ここはどこだ?」
楓は困った顔で焔にこういった。
「澪さんの後を追ってここに来たから・・・ごめんなさい。あ・・・あの・・・」
「何だよ。」
「焔さんもマッドデビル・・・なんですよね?」
焔は少し笑いながら「そうだ。」と返した。
すると、楓は後ろを向き・・・
「雷!焔さんもマッドデビルだって。」
「澪さんも焔さんも俺達と一緒!」
後ろで何か得体の知れないものを貪り食ってる男がそう答えた。
「お前、何食ってるの?」
「うん?腕。」
そういいながら、雷は闘技場で死んだ客の腕を焔に見せつけた。
「食べる?」
「い・・・いらん・・・(恐)」
(こいつも、いろんな意味で狂てるわ・・・)
すると、救護室のドアが開くと澪が入ってきた。
「僕の勝ちですね。焔さん。」
「まだ、負けたって言ってねぇだろ!」
「でも、その状態で僕と戦えますか?」
焔は自分の身体を見た。
普通ならすぐに回復するのに、傷がふさがらず、腕もほとんど動かなくなっていた・・・。
「無理ですよね。」
「・・・くそっ(怒)」
焔の目は悔し涙でいっぱいだった。
「約束守っていただきますよ。」
「あぁ!その代わり、終わったらもう一度戦え!澪!」
そう叫ぶと、焔は壁に顔を向けてしまった。
「約束って何ですか?」
楓は気になって澪にそのことを聞いた。
「死神という存在を消すために協力するって事です。最終的な目的は違いますが、僕も焔も死神が嫌い
っていうことは一緒ですので・・・。」
すると雷が不思議そうに見つめながら「で、澪さんの目的って?」と聞いた。
「澪でいいですよ。僕には好きな方がいるんですが、その方を死神に取られてしまいましてね・・・」
というと、焔が壁を向きながら「その女も死神だけどな。」とふてくされたように言葉を発する。
「じゃ、どうして死神を消すんですか?」と楓が聞くと澪は少し笑いながらこういった。
「彼女の周りを消して彼女だけにしてしまうんです。僕だけしか見えないようにするんですよ。」
雷は「ふ~ん」といいながら、焔が横になるベットに少し腰を下ろすと「焔の目的は何?」と聞いた。
「俺は、死神に家族を皆殺しにされた。種族の抹殺とか言ってよ・・・俺が家に戻ってきたときにはもう遅くってさ・・・俺は、死神に復讐する。それだけだ。」
焔は壁に顔を向けたままそう答えると「お前らはどうなんだよ?」といってきた。
「俺は、住んでる森を死神に燃やされそうになった。ま、俺だけで全員ぼっこぼこにして殺したけどな。だから死神嫌い。」
雷はそういいながらまた持っていた腕を食い始めた。
「僕は、悪魔だからって誰にも相手にされなかった。大体、死神のやつらが先頭になって・・・生きてくも大変だった。だから、遊んでくれなかったやつみんなバラバラに刻んであげた。あとは死神だけ。僕も死神嫌い。」
楓はそういうとフードを取ると、左頬に黒い蜘蛛のタトゥーが刻まれていた。
それを見た澪達は驚きを隠せなかった。
「このタトゥーは、子どもの時に死神に入れられたんだ。すんごく痛かったよ。でも、止めてくれなかった。笑いながら僕を実験台にしたんだ。だから僕はその場でその死神達を殺したよ・・・。だけどまだ許せない。僕も一緒に参加していいですか?」
澪はそっと楓を抱きしめ「ありがとう。よろしくおねがいします。」といった。
「俺も参加する!楓も一緒だし、俺も死神嫌いだから!」
そういいながら雷は食べ終わった骨を上に挙げながらそう答えた。
「お前早くその骨何とかしろよ!」
「怖いの?焔?」
「また呼び捨てかよ(怒)それにこ・・・怖くはねぇよ・・・」
「びびってる(笑)」
こうして彼らは、ともに行動することをにした。
それぞれの目標を達成するために・・・




