Act8:姉?
今回は、次の話(?)への序章っぽい感じです。
姉が出るかは、読んで確かめてください(笑)
この学園も学園というからには、訓練場だけでは無く、教室も存在する。
教室は普段、一般授業の時に使われる場所でもあり、生徒の一時の集合場所でもある。
が、戦闘訓練の方が一般授業より断然多いため、主に休憩時間の溜まり場だった。
今もそれぞれの教室で、話し合っている姿がちらほらと見える。
しかしその中でひとつだけ、他のクラスと違う雰囲気を持つクラスがあった。
“違う雰囲気”とは、他のクラスにはある喧騒が全くなく、静寂しかないからだ。
【1-A】というプレートのかけてあるクラスには、何とも言えない空気が漂っている。
さっきまで友達と話していた、クラスにいる全員がその場面を静かに見守っていた。
目線の先には、入って来て早々、朝比奈家の長男に喧嘩を売った。と言われたハイガがいる。
実際は、授業で、普通に魔法を発動しただけなのだが。
ハイガだけではこんなに目を引くことはなかっただろうが、残念(?)なことにハイガの目の前にもう一人注目の人物がいた。
一際目を引く金色の髪。
宝石みたいな蒼い瞳。
その立ち振る舞いだけでも、育ちの良さを見受けられる。
そんな彼、ハイガの目の前にいる彼は
カオンだ。
彼は、この前の事があった後、久しぶりにハイガに会いに来ていた。
彼の目は、何かを覚悟したかのように、スウっと細められ、ハイガをジーッと見ている。
ハイガがカオンの部屋に行ってから、約2週間が経っていた。
それから一度も会ってなく、とてもいい雰囲気と言える状態じゃない。
そこで、何か言おうとカオンが口を開きかけたとき、タイミングを見計らった様にルイが入ってきた。
「ハイガ居るか~?」
その一言で、凍りついていた空気が少し和んだ。
「ここに居ますが。
なんですか?」
ハイガは、ルイのいる教室の入口に振り向きながら聞く。
「下に、お前の姉って人が来て
お前を呼んでるぞ。」
その言葉に一瞬、不思議そうな顔をしたが、自分で納得して続きを促す。
「分かりました。
で、姉はどこにいますか?」
「多分、校庭に居ると思うけど・・・・・・。
ってかお前に、あんな姉ちゃん居たんだな~。
全く似てね~よ。」
「義姉弟ですから。
というか、あなたが付いてくる必要は無いと思いますが。」
「まあイイじゃんイイじゃん付いて行くくらい。
それに、俺もあの人と話してみたいし。」
そんな会話をしながら、二人は廊下を出て行った。
残されたカオンは、何とも言えない雰囲気で1-Aの教室を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
校庭に着くと、すぐにその人の姿が目に入った。
周りの生徒の視線が集まっている。
“自称ハイガの姉”さんは、乗ってきた黒くてごついバイクに、もたれかかっていた。
『普通自動二輪』所謂バイクは、魔法が日常化した現代にも普通に残っている。
もちろん『魔動制御二輪』という、魔力を使って走行するものも、開発されたことはもちろんある。
が、魔力を魔動制御二輪に送る管が、特殊な材料で作られているのでコストがかかるため、一般家庭じゃまず買えない。また、自分の魔力を使うので、燃料が無くなる度に毎回ガソリンを買うことは無くなり、長期的に見ると、こちらのほうが安くなるのだが、使う魔力がハンパなく多い上に走行距離が短い、つまり燃費が悪い。
それを改善できないかと多くの研究員達が試してきたが、結局改善には至っていない。
ということで今では普通自動二輪が広く使われている。
これを持っている家庭は多い。
なので、視線を集めている理由は、乗り手の方にあった。
自称ハイガの姉。こと、ハイガと同じ研究員のミヨイは、黒いライダースーツを着ているのだが、それがどうもサイズが合っていないようにピッチリしていて、女性の身体の線が見て取れた。
ヘルメットも脱いでおり、整った顔が見えている。がどう見ても20代。ここの生徒なわけがない。
そこで、周りの生徒は、あのお姉さん誰なんだろう?と話しかける勇気はないので、こっそり(と言うほどでもないが)見ていたのだ。
誰も話しかける様子はない。
ルイがハイガを呼びに来たのは、好奇心で話しかけたら、ハイガに用があるから読んできてと、言われたのだそうだ。
「ミヨイ姉さん。」
「ハイガ君。」
仕方なく、姉弟の設定に乗って、いつもと違う呼び方で読んでみると、嬉しそうに返してきた。
「どうかしたんですか?
学校まで来るなんて。」
そう聞くとミヨイは、ハイガの耳に口を近づけ、囁くように声を潜めて要件を話した。
「この間、言っていた、魔法の開発に成功したそうよ。」
「本当ですか。」
「えぇ。そこで、夕凪君に最終チェックをお願いしたいそうなのよ。」
「僕が、ですか・・・。」
「夕凪君が、よ。」
なぜかウインクしながら、返事をする。
「今からですか?」
「そうよ。だから私が迎えに来たんじゃない。」
どうやら本当にそのようだった。
ミヨイの手には、さっきは持ってなかった白いヘルメットがある。
それをミヨイは、ハイガに投げてよこした。
ハイガは
「ミヨイ姉さんと二人乗りしなきゃいけないのか・・・・・・・。」
と密かに呟いて、ヘルメットを被り、ミヨイの後ろに跨った。
「ちゃんと捕まっててね。」
とヘルメットを被る前にこっちを向き、何か企んだような笑を浮かべて言った。
言われた通りに、走行中に振り落とされないように胴の当たりに腕を巻きつける。
その際に
「きゃあっ!ハイガ君大胆♪」
と聞こえたが、ハイガは無視。
この行為に他意は無いので全く気にしない。
「じゃあ行くわよ。」
という声の後に、エンジンの音が鳴り響いた。
二人を乗せたバイクは、轟音と共に校庭から消えた。
校庭には、その光景を見た生徒全ての視線と、普通自動二輪のタイヤが巻き上げた砂埃だけが残された。
カオンくん出番少ないですOTL
ルイくん脇役になってます(笑)最初は、そんなつもりなかったんですが・・・。
姉はミヨイさんでしたね(笑)
ハイガの兄弟はまたいつか。