Act4:虫ケラ
ハイガ君、ちょっと腹黒いですww
カオン君で遊んでますね。
カオン君にも頑張ってもらいますがww
澄み渡った朝の新鮮な空気を、胸いっぱいに吸い込んでハイガは目を覚ました。
いつもと全く変わらない静かな朝。
ハイガは綺麗に磨かれた洗面台で顔を洗い、いつものごとく寝癖のついた髪をとく。
ここは、生徒全員に与えられた、寮の一人部屋(もちろん貴族達の部屋はもっと豪華)。
部屋の中にはシーツを綺麗に片付けたシングルのベッドと杉で作られた一人用のテーブル、それに合わせて作られた一人掛けの椅子、以上の必要最低限のものしか置かれていない。
殺風景な部屋だった。
ハイガは食事を摂るために、その飾り気のない部屋から出た。
寮にはとても広い食堂が一階にあり、大抵の生徒はそこで朝食・昼食・夕食を摂る。
料理は注文があってから作るため少々時間がかかるが、出来立てを食べることができ、思いの外人気がある。
ハイガは食堂の調理係にクロワッサンとコーンスープ、トマトサラダという洋風の料理を注文した後、セルフの珈琲をついで食堂の端っこに座った。
そこに、取り巻きを引き連れたカオンが食堂に入ってきた。
入ると何かを思いついたかのように、セルフでグラスに水をつぎ、ハイガの居る方へ歩いて来る。
するとなぜかハイガの前に来て、足を止めた。
瞬間、その場の空気が凍りついた。
カオンがグラスを傾けていた。
ハイガの頭の上で。
ハイガの髪と着ていた制服は、かけられた水でビショビショに濡れていた。
それをハイガは、冷たい目で見ている。
「あぁ、すまない。
手が滑ってしまった。」
とニヤニヤして全く反省していない顔でそんな言葉を吐く。
第一、手が滑ったというよりも、わざとかけたというのが本当で、言葉と事実が違っている。
が、誰もそんなことは口にしない。
朝比奈家の権力はとても強く、逆らえるはずがなかった。
「気にしてませんよ、別に。」
ハイガも朝比奈家の長男の機嫌を損なわないように、笑顔で対応しているように見えた、が。
次の一言で、さっきとは比べものにならないほど、空気が凍った。
「虫ケラごときの、ちょっかいなんて。
気にしていたら限がない。」
ニヤニヤしていたカオンの顔が自分を侮辱されたことで、真っ赤になった。
「俺をっ虫ケラだとっ!?」
ムキになって言い返せば
「別に、あなたを虫ケラ呼ばわりしたわけでは無いですが・・・。
あぁ。そう思うということは、自分が虫ケラだと、心のどこかで考えていたんじゃないんですか?」
と返される始末。
その言葉にカオンは、さっきより顔を真っ赤にしながら、こいつには口で勝てないと思って食堂を後にする。
残ったハイガは、制服をどうしようと心の中で考えながら、しかし注文した料理は食べないと失礼だお思い、黙々と朝食を食べた。
周りの痛い視線を気にせずに。
◆◇◆◇◆◇◆◇
場所は変わってカオンの寮室。
ハイガの部屋とは違いとても豪華な部屋だ。
ベットは天蓋付きのキングサイズ、飴色の長テーブルに数人掛けの高級ソファー、映像を見るための、とんでもなく大きい液晶ディスプレイに、たくさんのゲーム機。
正に、いいとこのお坊ちゃんという感じの部屋だ。
しかし今は電気がついていない。
そんな中に、部屋の主人がソファーに座り、ブツブツと独り言を呟いていた。
「あのやろう、この俺を侮辱しやがって
くそっムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!!」
カオンは、鬱憤を叫んで晴らすと、シンとした暗く冷えた部屋の中で、一言呟いた。
「あいつ
ツブす。」
やっと二人が接触しました。
次はカオンの過去に少し入ります。
カオンの幼少期の心境をちゃんと書けるように頑張ります!!