真実はいつも、お子様ランチ
コナンの逆 見た目は大人、中身は子供
この2つのお題での作品です。
俺の名前は工藤……じゃない、佐藤ケンジ。
都内の商社に勤める、ごく普通のサラリーマンだ。
ただ一つ、他人と違うところがあるとすれば――。
「佐藤部長。先方のプレゼン、いかがでしたか?」
部下の女性が、緊張した面持ちで尋ねてくる。
俺はイタリア製の高級スーツに身を包み、革張りの椅子に深く沈み込みながら、ゆっくりと足を組んだ。
眉間に深い皺を刻み、低い声で唸る。
「……ふむ」(つまんない。すっごく、つまんない)
そう。俺は、見た目は大人、中身は子供。
その逆転現象に悩む、哀しき三十五歳児だ。
目の前では、取引先の重役たちが、プロジェクターに映し出された複雑怪奇な円グラフを指しながら、熱弁を振るっている。
シナジー効果がどうとか、ROIがどうとか。
俺の目には、その円グラフが「ピザ」にしか見えていなかった。
しかも、具が乗っていない一番安いやつだ。
「……それで、弊社の提案ですが」
相手の専務が、脂ぎった顔を近づけてくる。
俺は無言で、彼を睨みつけた。
正確には、彼の変な水玉模様のネクタイを見て、「てんとう虫みたいだな」と考えていただけだ。
しかし、その視線は「射抜くような眼光」として処理されたらしい。
専務の額から、タラリと冷や汗が流れる。
「さ、流石は佐藤部長……。お目が高い。確かに、この条件では不十分……ですよね」
「……」(おしっこ行きたい)
「わ、わかりました! では、こちらの利益を二割削ります! これでどうだ!」
会議室がどよめいた。
部下が興奮して俺を見る。
俺は、どうでもよくなって大きく息を吐いた。
「……好きにすればいい」(早く終わらせて。アニメの再放送が始まっちゃう)
「ありがとうございます!!」
万雷の拍手。
俺は立ち上がり、ジャケットを翻して会議室を後にした。
背中で「あの若さで、あの貫禄……恐ろしい男だ」という囁きが聞こえる。
夕暮れの街。
俺は、行きつけの純喫茶の奥まった席にいた。
ハードボイルドな男に似合うのは、ブラックコーヒーか、バーボンだろう。
「お待たせしました」
店員が置いたのは、毒々しいほどに緑色に輝く、クリームソーダだった。
赤いチェリーが、宝石のように鎮座している。
俺は周囲を警戒しながら、ストローに口をつけた。
(知ってる人に見られたら死んじゃう)
シュゴォォ……。
炭酸の刺激と、アイスクリームの甘さが、疲れた脳みそ――実年齢五歳相当――に染み渡る。
(うめー)
俺は心の中で、蝶ネクタイ型変声機を使うまでもなく叫んだ。
この世の真実は、いつも甘い。
大人のフリをするのも楽じゃないぜ。
俺はアイスをスプーンですくい、口の周りを白く汚しながら、不敵に笑った。




