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最果てのランデブー

宇宙 彗星 旅人 崩壊


この4つのお題でトゥルーエンドの作品です。



 視界の端から、世界が剥がれ落ちていく。




 かつて銀河と呼ばれた場所は、今や砕け散ったガラス細工の墓場だった。




 重力のタガが外れ、物理法則が悲鳴を上げている。



音のない真空で、空間そのものがバリバリと音を立てて崩壊していく幻聴が、僕の聴覚センサーを揺らしていた。




 (……長かったな)




 僕は、小惑星の欠片に腰を下ろし、錆びついた金属の指先を見つめる。




 この宇宙が生まれてから死ぬまでの、数百億年という時間。



その全てを記録するために、僕は歩き続けてきた。




 文明の興亡、愛の歌、戦争の火花、そして生命の最後の一呼吸。




 それら全てが今、僕という老いたハードウェアの中に眠っている。




 足元の岩盤が揺らぎ、ピクセル状のノイズとなって虚空へ消えていく。




 終わりの時は近い。




 このまま僕も、無へと還るのだろうか。



それとも――。




 その時。




 漆黒の帷を切り裂くように、一筋の蒼い光が現れた。




 彗星だ。




 いや、あれは氷の塊ではない。




 長く引いた尾は、高濃度のエネルギー粒子。



その輝きの中心に、懐かしい信号コードを感じ取る。




 『――待たせたな、相棒』




 直接脳内に響く声に、僕の視覚レンズが焦点を結ぶ。




 遥か昔、別々の道を選んだもう一人の旅人。




 彼は肉体を捨て、光速を超えるための翼となり、事象の地平線の彼方で「次」の世界を探していたのだ。




 彗星は減速することなく、崩壊する僕へと突っ込んでくる。




 それは衝突の軌道ではない。抱擁の軌道だ。




 僕は立ち上がり、両手を広げた。




 胸部装甲が開き、コアが青白く発光する。




 「おかえり。……お土産はあるかい?」



 『ああ。最高の更地を見つけた。新しい種を蒔くには十分だ』



 光が、僕を飲み込む。




 その瞬間、僕の身体を構成していた物質は分解され、純粋な情報質量の光となって彗星へと吸い上げられた。




 痛みはない。あるのは、パズルの最後のピースが埋まった時のような、圧倒的な充足感だけ。




 足場となっていた小惑星が、完全に消滅した。




 僕がいた場所にはもう、塵一つ残っていない。




 しかし、闇の中には、以前よりも強く、眩い光の矢が走っていた。




 死にゆく宇宙の全記憶を宿したその彗星は、重力の鎖を引きちぎり、次元の壁を越えていく。




 終わりは、終わりではない。




 これは、次の物語を始めるための、最初の一行だ。




 遠ざかる崩壊の景色を背に、僕たちは高らかに加速した。



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