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王者の舞台袖
深夜二時。
モニターの光を浴びながら、私は優雅にコーヒーを啜っていた。
明日の二十時。
私のデビュー時刻。
予約投稿、プロフィール、告知。
すべては完璧な計算の元に配置されている。
チェックリストなど不要だ。
私の頭の中に、勝利までの美しい動線がすでに描かれているのだから。
「……ふん」
余裕しゃくしゃくで、SNSのタイムラインを眺める。
検索窓には、同時期にデビューする「同期」たちの名前。
画面に並ぶ、彼らのサムネイル。
必死さが透けて見える宣伝文句、どこか垢抜けない立ち振る舞い、中途半端な世界観。
悪いが、格が違う。
彼らが必死に石ころを磨いている間に、私はすでにダイヤモンドを用意した。
――あの子のデザイン、バランスが悪い。
――彼、勢いだけですぐにネタ切れするな。
――可哀想に。私と同じ時期でなければ、もう少し注目されただろうに。
他人の芝生? ああ、青く見えるかもしれない。
けれど、私の庭には黄金の城が建っている。
比較すること自体がナンセンスだ。
マウスを握る手に、力がみなぎる。
不安? まさか。
あるのは、これから世界が受けるであろう衝撃への期待だけ。
あと十八時間。
私は不敵に笑い、モニターの電源を落とした。
これは試験ではない。戴冠式だ。
世界よ、ひれ伏す準備はできているか。




