煙と空
雨が上がったばかりの空気は、湿り気を帯びて冷たい。
アスファルトの路面には、街灯水たまりに街灯が反射して、ぼんやりと滲んでいた。
俺は、コンビニの前で立ち止まり、ポケットから煙草とジッポを取り出す。
カシャリ、と軽快な音が鳴り、小さな炎が生まれた。その炎に、ゆっくりと煙草の先を近づける。
スッと息を吸い込むと、紫色の煙が静かに吐き出された。
それが、ゆっくりと夜空へと溶けていくのを、ただじっと見つめる。
こんな夜に、煙草を吸っているのは、俺一人だけだ。
誰にも邪魔されない、自分だけの時間。
そう思うと、なんだかこの世界が、いつもよりずっと広く感じられた。
誰もいない、静かな世界。
自分の吐き出した紫煙だけが、ゆっくりと空に昇っていく。
それは、まるで俺自身の悩みが、空へと消えていくようだ。
もちろん、悩みは簡単には消えない。
それでも、俺は、この紫煙に、ささやかな希望を託す。
いつか、この曇った心も、雨上がりの空のように、晴れ渡る日が来るだろうか。
俺は、煙草の火を、そっと消した。
そして、まだ少し冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。
新しい一歩を踏み出すために、俺は、ゆっくりと歩き出した。