夢のカケラ
あらすじ
これは、小さな希望が生み出す奇跡の物語。失われた夢のカケラを拾い、新たな輝きへと変えるための、
一夜のファンタジー。最後に咲が見つけた答えは、
あなたの心にも問いかける——
「あなたの夢は、どこにありますか?」
夢のカケラ
「夢のかけら」と「ゴミ拾い」を
テーマとした幻想的で心に残る
ファンタジー短編小説。
**プロローグ**
(夜の公園。冷たい風が吹き抜け、咲がベンチに座っている。彼女は虚空を見つめている。)
地の文:夜の公園は、昼間の喧騒とは別の顔を持っていた。冷たい風が吹き抜け、咲はぼんやりと虚空を見つめていた。灰色の空には星一つ見えない。心の奥底で輝いていた何かも、いつの間にか消えてしまったようだ。
地の文:かつて、小説家になることが夢だった。しかし、夢は現実の壁に何度も打ち砕かれ、咲はその夢を捨ててしまった。それでも、心の片隅に何かが残っている気がしていたが、その正体を知る術はなかった。
(風が吹き、一筋の光が咲の前にかすかに瞬く。)
地の文:そんな時、風に乗って舞い降りた一筋の光が、咲の前にかすかに瞬いた。まるで、失くしてしまった「何か」が再び姿を見せたかのように。
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**1章:ゴミ拾いの少年とその祖父**
(咲は光に見入っている。公園の隅でゴミを拾い集める悠人の姿に気づく。)
地の文:咲はその光に見入っていると、公園の隅で何かを拾い集める少年の姿に気づいた。彼は地面に落ちているゴミを、まるで宝物でも探すかのように、一つ一つ丁寧に拾い集めていた。
咲:「何をしているの?」
(少年が顔を上げ、穏やかに笑う。)
悠人:「ただ、落ちているものを集めているだけさ。誰かが忘れていったものを、探しているんだよ。」
咲:「忘れていったもの?」
悠人:「うん、誰かが無くした大事なもの。時にはゴミみたいに見えるけど、本当は大切なものなんだ。」
地の文:少年の声は、どこか夢見るような響きを持っていた。
咲:「名前は?」
悠人(ふわりと笑って):「悠人だよ。」
地の文:その言葉が咲の心に小さく響いた。まるで、彼が集めている「何か」が、自分にも関係しているかのように。
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**2章:祖父との会話**
(悠人がゴミを拾う様子を見ていた別の少年、翔太が家に帰り、祖父に問いかける。)
翔太:「おじいちゃん、今日公園でゴミ拾いをしている人がいたんだけど、なんであの人はそんなに嬉しそうに拾ってるの?」
(祖父は微笑みながら答える。)
祖父:「あれはな、『運』を集めているんだよ。」
翔太:「運?」
祖父:「そうだよ。運っていうのはな、人が運んでくるものだ。そして、時々その運は誰かが落としてしまうこともあるんだ。それを拾い集めると、自分の運も良くなるし、誰かの運も救えるんだよ。」
地の文:その言葉に翔太は少し首をかしげたが、ふとあるエピソードを思い出した。
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**3章:遊園地での出来事**
地の文:それは、つい先日家族で遊園地に行った時のことだった。翔太は、遊園地のスタッフが地面のゴミを拾っている姿を見て、「何をしているの?」と尋ねた。
翔太:「それってゴミを拾ってるだけだよね?」
(スタッフがにっこりと笑いながら答えた。)
スタッフ:「違うよ、これは『夢のカケラ』を集めているんだ。」
翔太:「夢のカケラ?」
スタッフ:「そう。遊びに来た人たちが楽しかった思い出を置いていくんだ。そのカケラをちゃんと拾って集めると、また新しい夢を作ることができるんだよ。」
地の文:その時は、遊園地のスタッフの言葉がただの冗談だと思っていた翔太だったが、祖父の話を聞いた今、その言葉が急に深く感じられた。
翔太:「じゃあ、あの人も夢のカケラを集めてるの?」
祖父:「そうかもしれないな。運も夢も、拾う人の心のあり方次第でどんな形にもなるからな。」
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**4章:夢を拾う旅の続き**
(咲と悠人が公園でゴミを拾いながら話す。)
咲:「ゴミを拾うことが、どうしてそんなに
大事だと思えるの?」
悠人:「僕にはね、誰かが無くした大切なものが見えるんだ。それがただのゴミじゃなくて、その人が失った『夢のカケラ』だったり、『希望の欠片』だったりすることがある。」
地の文:悠人の言葉は咲の心に響いた。自分の中にあった消えかけた夢のカケラが、どこかでまだ輝きを待っているような気がした。
(咲が再びペンを手に取る場面へ続く。)
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**5章:夢の中の並木道**
地の文:咲は小説を書きながら、いつの間にか机に突っ伏して眠りについていた。夢の中、彼女はどこか見覚えのない場所に立っていた。ぼんやりと霧がかかった並木道。冷たい風が吹き抜ける中、足元には無数のゴミが散らばっていた。
咲:「ここは……どこ?」
地の文:見渡しても誰もいない。ただ、地面に落ちた缶や紙くず、ビニール袋が目に入る。咲は眉をひそめながら一歩を踏み出した。
ゴミを避けるように歩いていると、
不意に聞き覚えのある声が聞こえた。
悠人(声だけで):**「見える?」**
咲:「悠人……?」
地の文:咲は周囲を見回したが、悠人の姿はどこにもない。ただその声だけが、霧の中に響き渡った。
悠人(声だけで):**「ただのゴミに見えるかもしれない。でも、それは誰かが落としてしまった『夢のカケラ』かもしれないよ。」**
地の文:その声を聞いた瞬間、咲の目の前の景色が一変した。先ほどまで無造作に捨てられたゴミが、眩い光を放つ欠片に変わったのだ。それはまるで星屑が地面に散りばめられたように輝いている。
咲:「これが……夢のカケラ?」
地の文:咲はその光に手を伸ばした。
一つ一つの欠片が手の中で温かく、
彼女の胸の奥深くに響くような気がした。
悠人(声だけで):**「そう。それはね、誰かが諦めた夢や置き去りにした希望の名残なんだ。誰かが拾わなければ、それはずっとそこに眠り続ける。」**
咲:「拾い集めたら、どうなるの?」
悠人(声だけで):**「それは拾う人次第。君の心の中で、新しい形に生まれ変わるんだ。」**
地の文:悠人の言葉に導かれるように、
咲は光の欠片を拾い集め始めた。
それは不思議な感覚だった。ただのゴミだと思っていたものが、手に取るたびに胸の奥に暖かい光を灯すようだった。
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**夢の終わり**
地の文:ふと、霧が晴れた。その先には、
公園のベンチで微笑む悠人の姿が見えた。
しかし、咲が近づこうとすると、彼の姿は
ゆっくりと溶けるように消えていった。
悠人(遠くなる声):**「君の中にも夢のカケラはある。それを見つけてあげて。」**
地の文:咲が目を覚ますと、机の上には小説の原稿用紙が広がっていた。その隅には、
無意識に走り書きした言葉が残されていた。
咲(心の声):**「夢は、どこかに捨てられても、拾う人がいればまた輝き始める……。」**
地の文:その言葉を見て、咲は深く息を吸い込んだ。もう一度ペンを握り直し、
小説の続きを書き始めた。
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この夢のエピソードは、咲が自分の中にある失くしたものを拾い直すきっかけとなり、
物語のクライマックスへと繋がっていく。
**エピローグ:翔太の新たな気づき**
(悠人が姿を消した後、公園で一人ただすむ
咲を見ていた翔太。)
翔太(心の声):あの人も、自分の夢のカケラを探しているのかな……。僕も、何か拾えるものがあるかもしれない。
地の文:翔太はそっと地面に目を落とし、
小さなゴミを拾い上げた。
それはただのビニール片だったが、
なぜか彼の手の中で温かく感じられた。
翔太:「これも夢のカケラかな。」
(祖父の言葉を思い出しながら、未来への一歩を踏み出す翔太の姿で物語が締めくくられる。)
地の文:夜空にまたたく星々が、
まるで彼らの夢を応援しているかのように輝いていた。