嘘の発覚 08:56
今まで当たり前だった生活があっけなく崩れていく。
破壊と再生
2人の行き着く先はどこに…
#小説
#嘘
「豊田様
さて、早速ではありますが令和6年5月1日付にて弊社よりご請求しております1,500,000円の代金について、本日時点で入金の確認ができておりません。
ご多忙のところ、大変恐縮ではございますが、至急ご確認のうえいつまでにお支払いいただけるかご連絡をいただけると幸いでございます。
つきましては、◯月◯日までにお支払いを頂けない場合、誠に遺憾ではございますが、法的手段をとるほか遅延損害金、延滞利息、請求手数料を加算させていただくこともございますことをご承知おきください。」
その日は突然やってきた。
同棲していた淳が家を出ていって
早1週間。
それはほんの些細な出来事のはずだった。
一緒に育てていた、観葉植物のポトスの様子がおかしくなって、
葉が萎れてしまっていたから、葉の部分をひっくり返したり、茎を触るとさらにシナシナになってしまい、
淳にSOSをだした。
「ポトスの様子がおかしいんだけど、見てくれない?」
今思えばもうその頃には、淳の様子はとっくにおかしくて目も虚になりあらぬ方向を見ながら、
落ち込んだり笑ったり情緒不安定だったように思う。
それでも、わたしは何とか淳との関係を取り戻したくてよく話しかけてた。
萎れて元気のなくなったポトスの様子をみた淳は
「お前何をやったんだ?!
観葉植物ひとつもまともに育てられないなんて、
ほんとダメなやつだな。」と怒鳴った。
「違う、わざとじゃない。なんとかしようとして見てただけだよ」
「だったら何でこんなふうになるんだ?!
意味がわからない…」
そんな風に私をいなしながらポトスに水をやっていた。
もう耐えられない。
わたしは淳に掴み掛かり、喧嘩をふっかけてしまっていた。
そう、その喧嘩が淳によって意図してふっかけられた喧嘩であることも知らず。
その喧嘩が、彼と対話の最後になることも知らずに…。
わたしが知っている淳は、いつも人懐っこくて穏やかで優しい自慢の夫だった。
約6年付き合った元彼と別れた後、憔悴しきっていた私は、大好きだった彼のことを忘れようととあるマッチングアプリに登録をした。
元彼は、リハビリの仕事をしていたが、帰りが遅く不審に思っていたところ、彼のリュックからラブホのカードが出てきて、それで揉めて別れてしまっていた。
だから今度探す人は反対の人を探したいと思って
条件は穏やかな人、タバコを吸わない人、暴力を振るわない人、そして浮気しなくて地元が同じ人
そんなことを簡単にプロフィールを書き、自分の横顔投稿すると、何人かの男性からイイネがついてお誘いメールが届いた。
その中に淳はいた。
最初はメールでの軽い挨拶から始まり、
地元の話になったとき私の生まれ育った故郷とほぼ同じ場所で育ったことがわかった。
親近感が湧き、彼に誘われるまま次の土曜日、地元のファーストチェーン店で昼間会うことになった。
私は普段営業の仕事をしているけれど、極度の人見知りで仕事スイッチが入らない限りうまくしゃべれない。
だからその日は少しだけおしゃれをして仕事モードで喋ろうと思った。
少しだけ早く待ち合わせ場所について、どんな人かとそわそわしながら待っていると、思ったよりも、端正な顔の彼が現れた。小型犬のように甘いマスクをしていて身長は176センチ位だろうか?
不覚にも、私はときめいてしまった。
思ったよりも、タイプの人が来たせいか、
「は、初めまして…っ」と、両手バタバタさせながら、案の定空回りして慌てふためいてしまった。
そんな様子を見た淳が口元抑えて笑いながら、
「美穂さんて面白いんですね」と笑ったそのあどけない笑顔がとても可愛かった。
とてもおいしそうなカフェラテが運ばれてきて、
彼は饒舌にいろいろな話をしてくれた。
もともと1人でフリーランスとして、物品回収の仕事をしていたこと、少し前までは物品回収の仕事の後に営業の仕事も重ねてしていたこと
そして今は仲間で新しい取り組みをしていて、某SNSでゲームチャンネルを立ち上げていると言っていた。
あどけない笑顔と、
「そうだ。今度仲間とゲームするんですよ。美穂さんも一緒に行きませんか?」と言うお誘いに
「楽しそうですね。考えてみます。」と返事をして別れた。
別れ際、また会いたいですと言われ
駅まで送ってくれた。彼はとても好印象だった。
帰ってからふと今日の淳とのことを思い出していると、昼間交換したRINEからピコンと音が鳴った。
「美穂さん、今日僕と会ってくれてありがとうございました!美穂さんの無邪気な姿、何でも話してくれるところ、とっても可愛かったです。
さっき駅で別れてすぐなのにこんなこと言うなんて気が早いと思うかもしれないけど、僕はまた明日もよかったら美穂さんに会いたいです」
そう言われて、今まであまり積極的に来られたことがなかった私は、キュンと来てしまった。
「明日予定ありますか?」と言う彼の等に対して特に予定のなかった私は
「私も淳さんとお会いできてお話しできて楽しかったです。明日私も特に予定がないのでよかったら会いましょう!」と返事をしてしまっていた。
次の日、また会った彼は昨日と違った装いで
少しラフな格好していて、
「あ、美穂さんこっちこっち!」と手を振ってくれた。
元彼と別れてから、私はろくな出会いをできていなかったので次こそ付き合う彼を最後の彼氏にしたいと思っていた。
彼のあどけない笑顔は、わたしの気持ちをキュンとさせる、
すっかり心許した。私は昨日よりもさらにたくさんのことを話しした。
いろんなことを話す話の中で、彼はふと
「あそういえば、美穂さんて今実家暮らしなんですか?それとも一人暮らしなんですか?お仕事営業なんですよねすごいなぁー」と聞いてきた。
「営業は大変だけど、楽しいこともたくさんあるんでありがとうございます!
今は実家暮らしですよ!」
すると彼がそうなんですねとニコニコして頷いてきた。
その後一緒に行ったカラオケボックスで、彼は甘いメロディーのラブソングを歌った後、急にこちらに振り向き
「美穂さん…昨日の今日でこんなこというの変かもしれないけど、僕美穂さんのことが好きになってしまいました!よかったら付き合ってもらえませんか?」
私も淳さんのこともっと知りたい…だけど、この恋愛を最後にしたい。すごく迷ったけれど、あまりにも真剣に、彼が私のほうに向かって告白をしてくるので
「いいですよ、私でよかったらどうぞよろしくお願いします」と答えていた。
それが今から6年前の話だった。