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俺は逃走する。

今回は、「パイレーツオブカリビアン」やケビン・コスナー主演の「ロビンフッド」をイメージして書いてみました。

次こそ主人公の能力が発揮する話を書きますのでしばしお待ちを。(^^;)

 俺は地下の牢獄にいた。


 明日処刑されるということで、看守から出された食事は喉を通らなかった。


 『検査の義』で判明した『ゴーレム使い』の能力を使って脱獄できないか試してみたが、牢獄には魔術を封印する術式が設定してあるとのことで出来なかった。


 子供の頃は理由も無く理不尽なイジメに遭い、大人になってからも理不尽にも妻やその間男に殺されて財産を奪われ、異世界に転生しても判明した能力を持っていると言うことで死刑宣告されてしまう。もう『理不尽』だらけだ。


亡くなった祖父から「拓也、どんなに自分が苦しくても、希望を捨てるな。終わらない苦しみは無い。どんな暗闇でも最後は光がさす。」と言われたことを思い出した。


 だが、この状態でどの様にしたら希望が見いだせるんだ?絶望ばかりじゃ無いか。


 俺は泣きながらベットに潜った。「理不尽だ。」とつぶやきながら。


 翌朝、目が覚めた。だが、全く眠れてない。朝食が看守から出されたが食べる気にならなかった。


 シーツを被ってベッドで震えていると、時間なのか看守が牢獄のドアを開けて兵士達数人を中に入れた。兵士達はベットに潜り込んでいる俺を無理矢理引きずり出し、手枷をつけ牢獄から城外に連行した。外はまだ明るい。午後になったばかりだ。


 俺は手枷をされたまま、むき出しの荷馬車に乗せられた。


 「荷馬車に乗せてこのまま刑場へ行くのか?処刑は17時と聞いたんだけど早過ぎないか?」


俺が兵士の1人に質問すると、兵士達から嘲笑の声が聞こえた。


「お前、バカか?死刑囚は市中に引き回されてから大衆の面前で首を切られるんだよ。その引き回しのために時間がかかるからこの時間帯に始めるんだよ。よく覚えておきな。あっ、でもお前この後死んじまうから覚えても無駄か、アハハハハハ。」


何だ、この国は?死刑はイベント扱いなのか?戦国時代の処刑方法じゃ有るまいし。


俺は、兵士達に囲まれながら市中引き回しのため馬車に乗せられて城下の市街地に連れてこられた。


馬車はゆっくりと兵士達が歩く速度に合わせて進む。そのため俺の顔は城下の街の人たちにたっぷりと晒される。


「あれが勇者を語った『ゴーレム使い』なの?恐ろしいわね。」


「この悪魔め!お前みたいな『ゴーレム使い』は死んでしまえ!」


「このニセ勇者め、恥を知れ!」


俺が乗った馬車が進む沿道の人々は大人、子供とも容赦なく俺に罵声を浴びせる。


中には俺に向かって石を投げる者もいた。投げられた石が俺の額に当たり血が出た。


「悪者を成敗するぞ。」と小さい子供に石を与えて投げさせる大人もいた。


何で俺はこんなに嫌われるんだ?『ゴーレム使い』がそんなに憎まれる能力なのか?


これじゃあ、1人を2人以上の集団でボコる『イジメ』と変わらない。


フランス革命でギロチンで処刑されたルイ十六世やマリーアントワネットや関ヶ原の戦いに負けた石田三成もこんな打ちを受けたのか?


もう、沿道の大衆は俺が「悪者」と言うレッテルを貼ることで酔いしれている様だった。


 ローマのコロッセウムの様な円形闘技場の様な所に入る頃、俺は大衆の罵声で心はボロボロ、彼らから投げられた石で、体ばボロボロで血まみれになっていた。


 その円形闘技場の中央にコンサート会場の様に、即席で建てられた舞台の様な感じの刑場があった。その舞台の上に首をのせる『断頭台』があった。


周りを見ると、円形闘技場の席には大勢の大衆が「殺せ!!殺せ!!」と大声を上げていた。そして特等席みたいな所には、ガキンチョ皇帝のゲルマと大臣のブルーノが座っていた。


 俺は馬車を下ろされ、手枷をされたまま兵士達に連行され断頭台に縛り付けられた。黒い覆面を被った首切り役人が斧を持って現れた。俺は「死ぬなんて嫌だ!」とあがいたが、他の覆面を被った首切り役人に押さえつけられてしまった。


 役人が罪状を読み上げた。そのあと手をあげて、叫んだ。


「今から処刑を始める。太鼓を鳴らせ!!」


太鼓の音が鳴らされる。斧を持った首切り役人が近づいて斧を振り上げる。「もう、ダメか。」と俺は目をつぶった。


その時だった、突然、首切り役人が「うわぁ。」と声を上げた。横目で見ると、首切り役人の腕に赤いバラの花が刺さり、斧を落としていた。


 その後、黒装束に覆面をした人物が、ロープを伝って降りてきた。その様子は映画の『怪傑ゾロ』の様だ。


 黒装束は俺を縛っている手枷を持っている仕込み杖のような物で切り落とした。


「少年!生きたいのであれば、付いてこい!!」と言って、黒装束は俺の手を引っ張り刑場から逃げ出した。


「追え、追うんだ、あいつらを捕まえろ!!」と兵士達が俺と黒装束を追ってくる。


 黒装束は魔法陣を展開して、俺の手を引っ張って一緒に魔法陣に飛び乗った。するとトランポリンみたいにジャンプして、コロシアムの観客席に降りた。


 その後、俺と黒装束が走って観客席の1番高い場所に行くと、彼はまたトランポリン魔方陣を複数展開して、俺と2人でコロシアムの外へ飛び降りた。黒装束はその先に繋いでいた馬に俺と一緒に乗り市街地に向かって走った。

 

 これで逃げられると思ったのも束の間、逃げる道の前方と後方に兵士が集結して馬の前に立ちはだかった。逃走劇もここでアウトか?


 ところが黒装束は突然煙幕弾を地面に叩き付けた。黒い煙で兵士達はむせたりして混乱している。それに乗じて黒装束は高笑いをしながら俺を乗せた馬で兵士達の頭を飛び越えた。そしてこの都市の城壁の出口を目指して走った。


 目の前に城壁の出口である検問所みたいなところが見えた。兵士達が槍を構えて通せんぼをしている。


「あそこをくぐらないと外へは出られないぞ。どうするんだ?」と俺は質問した。

黒装束は「まあ見てろ。」と先ほどと同じようにトランポリン魔方陣を展開した。


 俺たちが乗っている馬はそれに飛び乗り、まるでスーパーマリオの要領で城壁のてっぺんを乗り越え外に出た。そこからさらに走って森を抜け、河原の様な所に来た。


 俺は馬に乗っていたにも関わらず、必死で逃げたせいか息は絶え絶えだった。


 それに対して黒装束は疲れた様子も見せずに平然としていた。そして俺に手をかざした。


「少年、今から治癒魔法をかける。じっとしてろ。」まあ、ここへ召喚されたせいで16歳になっているから「少年」だけど、前の世界では30代だから、呼び方に違和感を感じる。


「はあ、はあ、俺を助けてくれた事には感謝する。もしかして、俺が召喚された時の歓迎パーティで俺に背後から忠告したのはアンタか?」


「そうだ、君の持っている『ゴーレム使い』の能力からこの事は予想できた。」


「ところでアンタは何者なんだ?」


「私か、『影の騎士』とでも言っておこうか。訳あって今は正体を明かせないが。」


「何で俺を助けた?アンタも刑場にいたから見てると思うが、俺は石を投げられるほど嫌われている『ゴーレム使い』だぞ。何の得があるんだ?」


「少年よ、私は君のその『ゴーレム使い』の能力が必要だから助けたのだ。」


「必要?」


「おっと、追っ手が近づいてきたな。今は詳しく説明してるヒマは無い。ここで死にたくなければ、この飛行竜に乗れ。」


影の騎士は河原にいるドラゴンのような生き物を指さした。そのドラゴンつまり飛行竜は馬の鞍の様な物を背中につけている。


「これに乗る?」


「そうだ。これに乗ってガレリア公国の首都ホープタウンへ行け。詳しいことはそこで説明する。それとこの袋には着替えと食料と治療薬とポーションが入っているから受け取れ。」


彼は俺の手を引いて無理矢理に飛行竜の鞍に乗せて袋を渡し俺に背負わせた。


「影の騎士さんとやら、アンタは一緒に行かないのか?」


「私はここでまだやり残したことがある。むっ、追っ手が見えた。しっかり手綱を握ってろ。では、また会おう少年。」

影の騎士はニヤリと笑うと俺が乗った飛行竜の尻をたたいた。すると、飛行竜は急に加速して離陸した。


「オイ!ちょっとおォォォォッ?!心の準備が出来てねー!」

「無事を願うぞ、少年!」


俺は振り落とされない様に飛行竜にしがみ付いているのが精一杯だった。


 ある程度高度が上がると一定速度になり、安定した飛行になった。


 下を見ると、いつのまにか鬱蒼とした森林地帯が広がっていた。地球で言えばシベリアの森林地帯か富士の樹海の様な感じか?


 「見つけたぞ!劣等民族!」と、どこからか声がした。


 目を凝らして見ると、アイツだキムだ。飛行竜に乗って追いかけて来た。しかも後方にはトレドの兵士が乗った飛行竜が2人乗りで5騎ほどいる。


「キム、何でお前がここにいる?冒険に出てたんじゃないのか?」


「ブルーノ大臣直々の依頼だ。悪人のお前を仕留めれば5000ゴールド貰えるからな。やはり劣等民族は悪人なのは定番だな。それに、せっかくお前が処刑されるところが見られたのに、あんな茶番を演じやがって。」


「キム、お前の戯言に付き合っている暇は無い、邪魔するな!」


「うるせえ、喰らえッ!」


キムは右手から青色の巨大な光線弾を俺に目掛けて発射した。


俺の飛行竜に命中すると、その衝撃で飛行竜から俺は弾き飛ばされて落下した。


何だよ、一体俺が何をしたんだよ?前世では、妻の美弥子とその不倫相手の保田に財産目当てで崖から突き落とされて殺された。運良く異世界に転生したと思ったら、中世ヨーロッパの魔女裁判の様に『ゴーレム使い』の能力を持っているだけで死刑にされる。


 ナゼだ?ナゼだ?理不尽な事ばかりじゃないか。俺は恨みつらみを呟きながら森へ落下して気を失った。


Copyright(C)2023-寒河江たかし


次も執筆中ですのでお楽しみに。

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