俺は殺された
初めて投稿してみました。
仕事の合間に書いているので、投稿頻度が一月一回か二月一回になるかもしれませんが頑張って書いてみます。
感想などがあればよろしくお願いします。
「何で俺がこんな酷い目に遭わなきゃならないんだ!?」
「お前に掛けた保険金はオレと美弥子の幸せに使うから安心しろ。大体オメーの様なブサメンはオレ達のATMぐらいの価値しかねーえんだよ。」
「そうよ、拓也、私がアンタと結婚したのもアンタのお爺さんが残した財産が目的なの。誰が好んでアンタの様な醜い男と結婚するもんですか。アハハハハハ。」
俺は今、サスペンスドラマに出てきそうな岬の崖の上に元嫁とその間男とコイツらの手下らしき2人に追い詰められている。すぐに逃げたいが、この4人に麻酔薬を打たれて体が動かず寝転がっている。
彼らは俺を自殺に見せかけて、この崖から突き落として殺そうとしている。
何故だ、俺の様な太って醜い顔の人間は幸せになってはいけないのかよ?
大人になっても小中学に体験したイジメは終わらないのか?
俺の名前は杉山拓也32歳、小学四年生の時に両親を亡くし、みんなから「醜い顔」と言われ、気弱だったことと、どんくさい性格もあってイジメに遭っていた。
普通なら絶望して自殺するところだが、父方の祖父母夫妻が俺をいつも励ましたり、いじめっ子の親を警察などに訴えてくれていたおかげで人生に絶望しなくてすんだ。
祖父曰く「拓也、どんなに自分が苦しくても、希望を捨てるな。終わらない苦しみは無い。どんな暗闇でも最後は光がさす。」
俺は、そう信じてどんなイジメにも耐えてきた。
祖父はロボット工学の技術者で介護ロボットの開発を行っており、障害者のために設計を行っていた。そのための特許も沢山持っており祖父母の家は裕福で資産家だった。
その祖父の影響で手作りの小型ロボットを作るのが俺の趣味になっていた。
その後、大学の工学部に進学。祖父と同じ道を歩むため機械設計の大手事務所に就職が決まった。
やっと人生に光がさしたと思った。
しかし、就職の報告をしようとしたら、祖父母は飛行機事故で死亡。そのため俺は天涯孤独となった。
祖父母の家と財産を相続した後、就職した。
両親や祖父母が居ない悲しみを忘れようと仕事に熱中しすぎて身体を壊してしまった。
丁度その時、職場の上司同僚と一緒に見舞いに来ていた同僚の派遣社員の伊藤美弥子と知り合った。彼女は献身的な看病をしてくれた。その1か月後「一緒に暮らしませんか」と言われたので、すぐに結婚した。
これが更なる悪運を呼ぶ事になるとは思わなかった。
不運続きで精神的にも参ってしまったため美弥子の本心を見抜けなかった。
最初、美弥子は良妻を演じていたので俺のことを愛していると思っていた。
ところが、ある日仕事が午前中に終わって早く家に戻っていると、駅前で美弥子が男と抱き合って、そのままいかがわしいホテルに入って行くところを見てしまった。
俺は探偵に依頼して調査してもらった。すると美弥子の浮気の証拠が沢山でてきた。しかも間男は中学生の時に俺をいじめていた保田聡だった事が解り、俺の怒りは頂点に達した。
俺は美弥子に「出張してくる」とウソを言って、こっそり弁護士に相談し保田と美弥子から慰謝料を請求する準備をした。
俺と弁護士は家近くのファミレスで美弥子と保田に不倫の証拠を突き付けた。
「中学生から、オレよりカースト最下位のお前が嫁を寝取られるのは当たり前だろ、ヴォケが!」
「拓也、この人とは一時的な誤りなのよ。もうしないから許して。」
間男の保田は太々しく開き直り、美弥子は泣きながら詫びを入れていた。
「とにかく、離婚だからな。美弥子、保田、お前らには慰謝料を確実に払ってもらうからな。出来なければ裁判所で再会となるな。」
「何だと!お前はオレ様に楯突くのか!」
保田は殴り掛かろうとするが弁護士から「傷害罪で訴える」と言われて大人しくなった。
離婚届けを出したあと美弥子を家から追い出した。その後、俺は家の片付けをやっていた。
掃除機をかけている時、突然、後ろから殴られて気を失った。気がつくと、俺は崖の上に寝転がされていた。
「お前には麻酔薬を注射しているから体は動かねーよ。オレ様に楯突いたバツだ。」
何だ?コイツ、子供の頃のイジメを未だ引きずるつもりか?
「保田、いい加減にしろ!俺を殺したら弁護士や警察が黙って無いぞ。お前ら二人とも刑務所行きだぞ。」
「弁護士?そんなのが怖くて生きていけるかっーの。お前が言う弁護士ってコレか?」
保田聡はビニール袋を俺の目の前に晒した。そのビニール袋の中には俺が依頼した弁護士の血まみれになった首が入っていた。
「ギャハハハハ、何が『法律が全て』だ。お前には味方はもういない。お前もコイツの後を追わしてやる。」
俺は美弥子を見た「俺と結婚しようとしたのは最初から保田と仕組んだ財産乗っ取りを目論んでいたのか?」
「そうよ、私が愛していたのは聡なの。彼との幸せを築くためにアンタの財産が欲しかったのよ。ホント、結婚して舞い上がっている醜男のアンタは道化師そのものねキャハハ。」
保田は手下2人に命じて俺を強引に立たせて崖のそばまで連れて行った。
「じゃあな。所詮、醜男で学校カースト最下位のお前がオレ達より財産持って幸せな一生を送るなんて生意気なんだよ。不運の星の下に生まれた事を後悔しながらあの世へいけよ。」
美弥子と保田は笑いながら俺を崖に突き落とした。
畜生!畜生!こんな理不尽な理由で32歳の人生を終わるなんて嫌だ。生きたい、生きたい、生きたい!
美弥子と保田聡、覚えてろ!いつか俺をこんな目に合わした事を後悔させてやる。
だが、もう遅い。俺は崖の下の岩に叩きつけられて、激しい波に呑み込まれて死んだ。
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