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美処女高校生の天才女流棋士が転生したら戦国時代だった  作者: lavie800


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第五十二話

「昨日の江戸城内にある静勝軒はほとんど焼け落ちたが、基礎の柱付近だけは焼け残っていた。

焼け残った柱の三階付近にぶらさがって発見された死体は黒焦げに近い状態だが、医師によると男性だということだ。

死因が背中から心臓付近に刺された小刀ということがわかった。

火災による死亡ではないということだ。

また、焼け残った着物と持ち物については、大野修理殿のものだということがわかった」

家康が宗古にそう説明した。

「淀君や大野春氏様にはもう連絡がいったのですか」

「すでに報告している」

「誰が殺したかですよね」

「そうだ。忍びの月だとは思うが。警戒を厳重にする必要がある」

「先ほどの王子稲荷神社でも、忍びの月の手裏剣が飛んできて、間一髪でした」

「だいじょうぶだったのか。大事な未来の人だからな」

「家康様の兵のおかげでなんとか」

「しばらくは外に出るときには勝吉と兵をつけることにする」


勝吉が部屋に入ってきた。

「家康殿、淀君がお呼びです」

「わかった」

「家康殿、おひとりでといわれました」

「わかった。淀君のところに行ってくる。ここで待っていてくれ」


部屋に残った勝吉に宗古は、昨夜の静勝軒の死体の状況を聞いている。

「御城将棋が終わって勝吉さんが能楽を演じていた時にはまだ大野修理氏は家康様の部屋で能を見ていましたよね。

そして私たちが茶阿局と話して、そのあと家康様と話をしていた時に静勝軒の火事があることを聞いたから、戌の刻あたりに事件が発生したと思います」

「犯人は、忍びの月に違いない。あの火災のときに静勝軒にいたからな」

「戌の刻で静勝軒に出入りした人物はわかりますか。

何故大野修理氏は静勝軒に行ったのか、自分で何かを探すために行ったのか、誰かに誘い出されたのかわかれば犯人もわかるかもしれません」


勝吉は家康の家来を呼んで状況を聞いた。

「静勝軒は一階の入口は一つにしてあとの出入り口は閉じていた。従って出入りできるところは一階に一つしかなく、戌の刻の前から家来が一人入口を見張っていたそうだ。

確かに、戌の刻になったばかりの時間に大野修理殿が静勝軒に来たそうだ。

淀君の指示だといわれたので家来はそのまま通したそうだ。そして三階に行くと言っていたようだ。

そのあと、囲碁打ちの算砂殿が来て珍しい囲碁盤があると聞いたので見せてほしいとやってきたらしい。

また戌の刻よりずっと前の時間に小那姫殿と茶阿局殿が別々に来たらしい。

小那姫は淀君からの依頼だと言っていたらしい。

茶阿局殿は普段から良く出入りされている」


それ以外に人の出入りは居ない。

ただ見張りが一人しかいなかったから忍びの者が裏手から密かに登ったらわからない。

静勝軒には月の小面の写し以外はそんなに金銀等の貴重品を置いていなかった。昔の時代の骨とう品や着物・打掛の倉庫代わりにしていた。

普段は中に人はいない」

「静勝軒は太田道灌の時代では江戸城の本丸だったといわれた所でしたから過去の色々な品物があったのでしょうね」

「茶阿局殿なら、静勝軒にどんなものを置いていたか詳しいに違いない」


家康が戻ってきた。

「淀君に提案されたのだが、悲しいことだが大野修理殿の死体は無かったことにしたいと。

今太閤殿下は国家のために集中しておられる。

そんな時に太閤殿下を心配させたくない。

大野の家は複雑で、修理は春氏と異母兄弟だということらしい。

春氏の母は、今淀君を伏見で世話をしている大蔵卿だ。修理は別の女が母との事。春氏と修理の父はもう戦死している。

最も仰天した淀君の提案は、春氏を伏見に連れて帰り大野修理として育てる、ということだった。春氏の兄弟は修理以外に二人いるそうだがすべて大蔵卿の子供であり問題は無いとの事」

「何か淀君にやましいことがあるのですかね」

宗古が家康に問いかけた。

「わからぬ。まあ淀君からの提案というか一方的な指示だった。

私も死んだ大野修理には申し訳ないがあまり好きな男では無かった。その点春氏は良く知っておりこれから何かとやりやすくなる。淀君に提案を反故にする理由も無いから、承諾しておいた」


宗古と家康は二人の間で分かったような顔をしていた。

「犯人不詳、死体も無かったことになる殺人事件ね」

宗古は振り返って吉川に声をかけ、そのあと小声で囁いた。

「私も大野修理氏には脅されたし、いけ好かない男だったけれど、実行犯人はあの人だと思う。

でも黒幕は違うのよね。黒幕はこれですべての秘密を葬られることができたのだから」


吉川も黒幕は何となく思い浮かんだが、実行犯人はわからなかった。

宗古は家康と以心伝心にようだった。

「家康様、私たちは江戸で調べたいことは終わりました。

そろそろ父と許嫁と伏見に戻ります。

実行犯人をこのままにするのは良くないと思いますので、再び家康様に呼んでいただきたい人がいます」

「わかった。伏見に帰る船を用意しよう。

それから、誰を呼べばいい?」

「それから、月の小面についてお願いがあります」

「わかった。未来の人の言う通りにしてみようと思う。

そちらの謎は解けたのか」

「まだわからないことがありますが、あの言葉のとおりやってみようと思います」



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