第三十九話
歴史的噂は本当だったのだな。
淀君が生んだ秀頼は太閤秀吉の子ではなく、大野修理の子なのだ。
淀君は後継ぎ欲しさに来電とも寝たのか。
宗古は家康に返事をせず、まだスマホを弄っている。
「家康様、忍びの月の声がします。
この城は出入口が厳重のはずなので、それでも忍び込めるということは、やはり城内の誰かと通じています。
月の小面が無いと名誉挽回ができない忍びの月は小那姫が小面を持っていると思っていますから、小那姫が襲われるかもしれません」
「わかった。堀尾吉晴と勝吉に指示して見張りを厳重にしよう。
逆に待ち伏せをして忍びの者を捕らえるぞ」
家康は勝吉を呼び指示を出した。
勝吉はそのあとすぐ部屋出て行った。堀尾吉晴と協議するようだ。
部屋のあちらこちらに見張りの兵が立つようになった。
「忍びの月は誰と通じているのだろう」
吉川は疑問を宗古に問いかけた。
宗古はまだスマホのアイコンを操作し色々集音機能を使っている。
「はい、当たり。
いつの世もダメ人間は変わらないわ」
宗古はスマホのアイコンを見せた。囲碁打ちの算砂だ。
「算砂様、今宵も沢山お飲みくださいませ。
沢山お飲みになって、私の体を楽しんでくださいませ。
勝手口の倉庫の鍵を開けていただきありがとうございました」
忍びの月の声だ。
「今宵も絶品のあん摩。
月の体が私の背中ですべすべして気持ち良いわ」
家康も聞いている。家来をすぐに呼んだ。
家来が戻ってきて言った。
「算砂様が上半身裸でいびきをかいて寝ておられます。
算砂様以外は誰もいませんでした」
「何か嗅ぎ薬を嗅がされたのかも。
忍びの月は、城内の小那姫様のところに月の小面があると思っているわ」
堀尾吉晴と勝吉も小那姫の部屋に入ってきて家康と兵の増強と対策について協議をしている。
吉川は宗古に呟いた。
宗古は不安そうな面持ちで家康と話をしている。
家康の家来が報告をした。
「小那姫様の部屋の中や周辺を確認しました。今のところ誰も居りませんでした」
「今宵は警戒が必要だが女一人では何もできるものではないだろう。
淀君には報告せずとも良い。
私は自分の部屋に戻るぞ」
宗古や堀尾吉晴や勝吉も家康に付いて部屋から出て行った。
小那姫の部屋は静かだ。
部屋の真ん中には一人で女が寝ている。
寝具の横にはからくりの将棋盤が空いて小面らしきものが見えている。
寝具の天井に人の気配が現れた。
突然天井の板が外れ、寝具に寝ている人物を目掛けて、音もたてずに忍びの者が下りてきた。
忍びの者は、小那姫の寝具に横たわっている女の首に腕を伸ばしてきた。
「小那姫、可哀そうだが安らかに眠ってくれ。私も命がかかっている。月の小面は頂いていく」




