巻き戻り
「ん…」
目が覚めると既視感のある天井。見覚えのあるベッドはふかふかして嗅ぎなれた自室の香りに包まれていた
「ここは…私の部屋?」
ゆっくりと起き上がると妙にベッドが高い。いや、自分が縮んだ?
自分の手をグーパーしてベッドから降りてみた
姿見まで歩いて行って覗き込むと薄い藍色の髪と紫紺色の自分がのぞいている
やっぱり小さくなってる。この夜着なんだか懐かしい。
トントンと静かなノックの音とともに侍女のミラの声がする
「お嬢様、本日も天気が良いで…」
そこまで言って不自然に止まったミラに振り返った。
ミラに視線を向けると目を大きくして驚いてるミラと目が合う
「お嬢様‼」
こちらに駆け寄り胸の前で祈るように手を組むミラの目からはたくさんの涙がこぼれていた
「ミラ…どうしたの?」
急に泣き出したミラに首を傾げる
「お嬢様、急に倒れられて一週間も目を覚まされなかったのですよ!」
ミラが言うには一週間前に庭のガセボでお茶をしている時急に意識が無くなったらしい。
直ぐに公爵家の侍医で、昔からずっと診てくれているフェンディ医師に診察をしてもらったけど
毒物の反応は無く、特に病と執れるような症状も出ず。ただひたすら眠り続けていたみたい。
もう、なすすべがなく家族も使用人たちも、このままなのかという諦めの気持ちと必ず目を覚ましてくれるという期待の気持ちとで待ち続けてくれていた。
「とにかく!旦那様と奥様にお知らせしてきます」
「あ…」
そう言って慌てて部屋を飛び出していくミラに声もかけれず立ち尽くしていた。
「シャリスタン!!」
ノックも無くドアがバンッと言う音と同時に開く。
大きな音に驚いてビクッと肩を窄めていると温かく大きなぬくもりに包まれる。
「お父様…」
「良かっ、良かった…」
お父様の身体が少しばかり震えている事に驚いてしまった。
いつも優しく、けれど貴族としては正しく厳しいお父様も泣いた姿なんて見たことは無い。
「シャリスタン…本当に良かったわ…」
横から声がしてそちらに顔を向けると、いつも明るいお母様が号泣しながら私の腕を擦っていた。