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狭間の神様

「私はあの絶望の中で、やっと終われると少しホッとしたのです」


10歳から始まった政略の為の婚約。殿下に対して愛はなくとも国の為、民の為、厳しい教育を懸命に熟し、殿下の振る舞いにも黙って耐えてきた。

最後の仕打ちが処刑なんて…。


「シャリスタン…」


「また戻ったとして何も持たない私に何が出来ますか」

俯き、手を握る力を込めれば爪が食い込み痛みを覚える。


何も出来なかった。

あんなにたくさんホールにいた人達は、殿下の振る舞いに眉は顰めていても誰も助けてはくれなかった。

確かに殿下を諌めれるような関わりのある人はいなかったかもしれないけど…それも狙いだったのかも知れない。


私の親しい友人は誰もいなかった。考えてみればおかしな事。

今になって冷静になれば少し笑えてくる。

嵌められた。恐らくは殿下よりマリン様だと思う。


婚約破棄ならいつでもしてくだされば良かった。

それこそマリン様と只ならぬ関係になったときでも遅くはなかったはず。


私はいつでも身を引いたのに。


お父様やお母様はいつも殿下の噂を聞いて気にしてくださったのに、家門の事を考えると「大丈夫」としか言えなかった。


お兄様はいつでも領地に帰ってきなさいって言ってくださったのに甘えることは恥ずかしい事と思って弱音は吐かなかった。

悔しい!悲しい…寂しい…。


「だからこそ、やり直してはどうかな…」

ヘルメは身体を擦り寄せエメラルドの瞳を潤ませている


「君は沢山の悲しみを知っている。理不尽と圧倒的な力で歪まされたキミの人生をやり直して」

柔らかな肉球でタシタシと手の甲を撫でてくるヘルメは悲しそうに眉を寄せている


「ヘルメ様…」

「ヘルメで良いよ、もう一度君の本来の人生をやり直してみて!君の思うように…それでもまた均等が壊れそうなら僕も黙っていない。」


だからお願い…と泣きそうな顔(に見える)でスリスリと身体を寄せてくるモフモフを強めに抱きしめた


「一人じゃない、僕もいるよ」


知らぬ間に頬を濡らす雫をザラザラした舌で舐め取りながら囁くヘルメのお腹に顔を埋めて思い切り吸い込んだ

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