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鈍色の光

(前生)


憲兵に連れて行かれたのは暗い地下牢。ジメジメしており埃っぽい。

貴族の罪人を留置するための貴族牢でも無いことに殿下の正気を疑った。


シャリスタンは公爵家の娘、父はこの国の外交を統べる者、母は大国カラドリウスの王女、その血が流れるシャリスタンはカラドリウスの王位継承権も低位だが持っている。


乱暴に投げ込まれ床に倒れ込んでしまう。

ガチャン!と音がして牢の入り口が締まると薄い灰色の暗闇になった。


「お父様、お母様、アル兄様…」


この時期、両陛下と両親は2つ国を挟んだバステル国に外交に行っていた。まだ2週間は帰ってこられない。

4つ上のアルフォンス兄様は領地でお父様から仕事を引継ぎながら領主補佐として忙しくしている。領地からお手紙をくれるのが楽しみだった。


暗闇の中、只祈るように家族の名前を呟く事しか出来ない。


目がなれてくるとく暗い地下牢の壁に恐怖が湧き上がってきて震えが止まらなくなる。


きっと調べてくれたら無実だと分かってもらえる。両親や兄、他の誰かが助けてくれる。

こんな馬鹿な話は無い。


小さな窓に鉄枠、たまに与えられる食事のトレーが入れられるときだけ看守が開く。ぼんやりと通路の明かりが入ってくるとホッとしてしまう。 


小さな硬いパン。コップに一杯の水は、たまに手が滑ったと倒される。それが次にいつ出されるかわからない食事。



陛下も両親もいないこの時期を狙って殿下は今日の夜会を開いたのだろう。私を断罪するためだけに。


殿下も最初からあんな人では無かった。昨年マリン様が王立学園に入学してから徐々におかしくなって行った気がする。


それから幾日立ったのか、暗闇と空腹に慣れ、絶望しか頭の中になくなった時、牢から引きずり出された。

身体はフラフラし、長かった髪は惨めにも切られている。


王城の中にあると思われる処刑台はギラギラと鈍く光る刃が月明かりに反射していた。


「シャリスタン、貴様を殺人未遂罪で処刑する」

声のする方へフラフラと頭を向けるとレオナルド様とマリン様が立っていた。マリン様はレオナルド様の後ろからニヤニヤと口元を歪めて見ていた。また何かを殿下に囁く。


あぁ、お父様やお母様、アル兄様に会いたかった。


瞳に何も映っていないような殿下の腕を掴みマリン様が囁く。

殿下がサッと手を上げるまで処刑台からまっすぐひと時も目を逸らさなかったのは公爵令嬢としての矜持か、ただの悔しさからか。


瞬時に訪れる重い痛み。そこで目の前は真っ暗になった。




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