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「それでね…」
「待って!待ってくださいませ。」
まだ頭の中が整理出来てないシャリスタンにグイグイ迫る勢いで話すモフ猫神様。
「それがなぜわたくしに関係が…」
どんどん話を進めるが一向に自分に関わりがあるようには思えず、神様が貴い存在だとはわかっていても話を止めてしまう。
「ふふっ、シャリスタンはせっかちさんだね」
話を止められたことを特に気にする様子もなく嬉しそうに尻尾を揺らしながらヘルメは笑った。
「ですが…」
「まぁまぁ、それでね、自称ヒロイン魂さんが目をつけたのが悪役令嬢」
「あく、やく、れいじょ…」
今度こそ目を大きく開き顔色を悪くした。様々な事が頭の中を過り、わずかに身体が後ろへ傾く。
「シャリスタン!しっかりして」
いつの間にか後ろに周っていたヘルメがトンッと背中を押してくれた事で倒れる事は免れた。
「シャリスタン、平気?」
尻尾で指先をふわふわと撫でるヘルメに小さく頷く。
「えぇ…私に悪役令嬢と何度も言ってきた方がいて…」
ミルクティー色の髪色をした可愛らしい令嬢を思い浮かべ、ドクドクと胸が激しく鳴る音がする。
指先に触れていたヘルメの尻尾の先を無意識に撫でてしまう。
思った以上にサラサラしている尻尾を何度か撫でると少し気持ちが落ち着いた。
「そう…やっぱり均等の鍵は…」
ヘルメの小さな声は聞き取れず耳を傾けてみたが何がブツブツと呟いて考え込んでいた。
(ネコって意外と表情豊かなのね)
何やらウンウン考えているヘルメの背を撫でていると不安な心が凪いでくるよう。
「じゃあシャリスタン、やっぱりもう一度戻ってこの世界を守って!」
…じゃあって、このモフ猫神様が何を言っているのか全くわからなかった。
「戻れと言われても…」
「シャリスタンは戻りたくない?」
ヘルメのエメラルドのような瞳が覗き込んでくる。