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「A太、お前だったのか……テレビ男だったのは!!!」
「今更気づいたのか? 相変わらず頭の回転が悪いな。そう、俺がテレビ男さ。お前がいつ気づくのかヒヤヒヤしたが、杞憂だったな」
そういってA太、もといテレビ男は貞子の逆バージョンの様に、目の前のテレビに頭を突っ込んでぬるりとテレビのなかに入っていった。
「こうなった俺は完全体だ。全世界中……いや、多次元世界にある全てのテレビの力を吸収して、俺のテレビ力の礎となる」
「ど、どういうことなの?」
戸惑う僕に対して、A太はふふふと不敵な笑みを浮かべる。
「ああ、低次元のテレビしか知らないお前にとっては難しかったか? 分かりやすく言うと……」
そういってA太はテレビの中から、また貞子のように飛び出してきた。
「こういうことだァー!!!」
威勢の良い言葉で勢いよくとび出してきたA太は、そのくせ腰から下が思う様にテレビから抜け出せないのか、ぐねぐねともがいていた。
「くっ……何故だ! 最近は間食もひかえていたのに!」
やはりどうしてもお尻がつっかかってテレビから抜け出せないようだ。
「A太……お前がテレビ男だというのは、実は前から分かっていたんだ」
「な、なんだと!」
戸惑うA太に真実を告げる僕。
「前々から分かっていたんだ。A太がテレビ男だという事も、もちろんY子が共犯だったってことも。都市伝説も全部お前が仕組んだってこともな」
「知っていただと! 嘘をつくな! だったらなぜ俺をそのまま野放しにしていたんだ!」
いまだにテレビから出てこれないA太を、僕は憐れむように見つめて、そして――