序文 愛の対義語
愛の対義語は、憎しみではなく無関心。
先日、そのようなことを伺いました。皆様はこのお言葉、どう思われるでしょうか。
え?
何を突然、ですか?
いえ別に、ちょっと気になったものですから。特に深い意味はないのですが、妙にその言葉が耳に残りまして。誰に言われたかというと――はて、誰に言われたんでしたっけ? 大学の授業で、だったでしょうか?
え?
私はどう思うか、ですか?
そうですね、どちらがよりつらいのでしょうか。
ものは試しですね。仮にということで――ええ、本当にただの仮で、思考実験の類として、現実にそのようなことがあるというわけではありませんし、あろうはずもございませんが、私とわが君に置き換えて考えてみましょう。
ある日突然、わが君が憎むようになる。
あ――シンドイ、シンドイです。想像しただけで泣いてしまいます。ああ、涙が止まらなくなってきました。酷いですわ皆様、こんなつらい想像をさせるなんて。心からお恨み申し上げます。
ぜぇはぁ――ああ、つらかったです。このようなこと、たとえ実験といえども考えたくはありません。ええもう、二度といたしませんからね。
え?
もうひとつも?
もうひとつって、あの――無関心、ですか。
皆様、鬼ですか? 悪魔ですか? 一周回って残酷な神ですか?
なぜそんな酷いことを私にさせるんですか。え? あ、はい、確かに私が言い出したことですけど。あ、いや、やめてください。想像させないでください。
ある日突然、わが君が無関心になる、なんて。
あ――無理――いや、いやです。そんなの嫌です。わが君が私を石ころでも見るような目で――ああーっ、いやーっ! そんなのいや、いやでございます!
それならいっそ、全身全霊で憎まれたほうがマシでございます!
ぜぇ、はぁ――無理、もう無理です。
私、ちょっと一休みさせていただきます。ホストとしてあるまじき対応で申し訳ございません。なるはやで戻ってまいりますので、お待ちの間、どうぞ皆様はこちらのお話をお楽しみくださいませ。
では、ちょっと失礼いたします。




