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序文に代えて
それは、古い手紙。
誰かに宛てて書かれた、しかしその宛先は書かれていない、思いのこもった短い手紙。
※ ※ ※
私は、愛してはいけない人を愛してしまった。
その人もまた、私を愛してくれた。
初めは知らなかった。
知ってしまったときには、もう想いを断ち切ることはできなかった。
愛して、愛されて、結ばれて、あなたが生まれた。
あなたは、私とあの人の愛の証。
私とあの人は、あなたの誕生を心から喜び、その人生に幸あれと祈った。
あなたは決して禁忌の子なんかじゃない。
あなたにはなんの罪もない。忌まれ、疎まれ、消えていい命じゃない。
すべての咎は、私が背負うから。
だからどうか、健やかに。
誰かを愛し、愛される人に育ちますように。
どうか、どうか。
幸せな人生を、歩めますように。
――母より
※ ※ ※
その手紙は、今も大切に保管されていて。
書かれていない宛先に届く日を、静かに待っているのでした。




