表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/125

09.六人のご令嬢

 来賓である貴族の入場が始まりました。


 名を呼ばれ、次々と入場してくる貴族たち。誰もが国王一家の隣にいる美しい女性、アウラの姿を見て驚きます。そこが風家の席であることに気づき、何事かがあったことを悟ります。

 ですが、下手に騒ぎ立てして風家に睨まれてはかえって面倒。一呼吸して落ち着きを取り戻すと、挨拶のため国王一家の前へと進みました。


「陛下、お招きいただきありがとうございます」

「おお、よく来てくれた」


 一人一人の挨拶を受け、言葉を返す国王。すべての貴族の顔と名前を覚えているのでしょう、その会話に淀みはありません。

 国王、王妃、そして王太子であるアルフレッドの三者には、誰もが声をかけていきます。その他の王子、王女への挨拶は人それぞれ。何かしら関わりのある者だけが声をかけていきます。


(退屈)


 そういう知り合いのいないシルヴィアにとって、この時間が最も苦痛でした。長い時間、お人形のように、にこにこ笑って突っ立っていなければならないのです。

 たまに声をかけられる兄や姉たちが、この時ばかりはうらやましいと思います。途中でちょっと会話をするだけでも気がまぎれるし、来場してくるのを待つ楽しみがあります。


(私にもそのうち、そういう人ができるのかな?)


 第三王女であり、上には五人の兄と姉がいるのですから、王位継承とは程遠い身。それでなくとも微妙な立場なので、招待される貴族本人と関わりができることはなさそうです。


 関係ができるとしたら、同じ年ごろの息子や娘とでしょう。

 建国祭に招待された貴族は、家族を一名だけ同伴することが許されています。仲良くなった子が連れられてくれば、その子から挨拶を受けることになるはずです。


 その第一候補はマリーですが、マリーは騎士団入りを目指しています。無事騎士団に入れれば、建国祭当日は警備の仕事があるため、来賓としての参加はできません。


 マリー以外となると、今のところ心当たりはありません。

 そもそも、建国祭に同伴していいのは社交デビュー済、つまり十八歳以上が条件です。マリーですら三年後、もし同級生の誰かとなると、あと八年は待たなければなりません。


(それまでお姫様でいられるかどうか、わかんないよね)


 八年後と言えば、国王は七十を超えています。王位は王太子であるアルフレッドが継いでいるはず。そのとき自分はどういう立場になっているのか、想像もつきません。

 アルフレッドの、どこか冷ややかな態度を考えると不安があります。やはり王女ではないと言われて西都へ追い返される、なんてことになるかもしれません。


(まぁ、それはそれでいいけど)


 王女の立場に未練はありません。ただ、なかなかにシンドイ状況にはなりそうです。せめて身の安全は保障されるよう、ある程度の味方は作っておく必要があるでしょう。


「リズバーン伯爵!」


 男爵、子爵が入場を終え、伯爵位の貴族が入場し始めました。ここから、いわゆる高位貴族になります。権力も財力も一段上となるため、身につけている物が明らかに変わります。


(あと少しね)


 入場してきたリズバーン伯爵は王室秘書室長ということもあり、シルヴィアも見知った顔でした。生真面目で融通の利かない「堅物」という感じの人ですが、仕事は丁寧でそつがないと評判です。

 その堅物の男は、若い女性を伴っていました。娘のようです。妻ではなく息子や娘と参加というのは、別に珍しいことではありません。

 しかし。


(ん?)


 そのご令嬢が、こちらを見て顔をこわばらせました。

 不思議に思い視線の先を見ると、異国の女神の衣装をまとうアウラが、何というかすごい(・・・)笑顔を浮かべて、ご令嬢を見返していました。


(……コワ)


 ご令嬢とアウラ、何か因縁があるようです。

 風家当主の婚約者なんて、まっとうな貴族の娘にしてみれば疫病神みたいなもの。決して関わりたくない相手のはずです。いったい何があったのでしょうか。

 しかも、同じように顔をこわばらせたご令嬢が、他にもいたのです。


 ダンドナルド伯爵令嬢。

 ロンズデール伯爵令嬢。

 オーモンド侯爵令嬢。

 クレア侯爵令嬢。

 アナンデール侯爵令嬢。


 全部で六人、すべて高位貴族の娘。

 この六人に何か共通点があるのでしょうか。シルヴィアは首をかしげましたが、何も思いつきません。ご令嬢たちのことをよく知らないのですから当然です。


(あ、同じ学校なのかな?)


 アウラとは同級生――兄のジルがそう言っていたことを思い出しました。六人のご令嬢は全員二十歳前後で、知的な顔立ちです。王立アカデミーに通っているのであれば、アウラを見知っていて当然でしょう。

 でもそれだけが理由なら、あんなにこわばった顔はしないはず。軽く会釈するなり笑顔を浮かべるなり、社交的な振る舞いをするでしょうし、そういう教育を受けてきている人たちです。


(なーんかあったんだろうなー)


 風家当主の婚約者と関わる、口外できない何かが。

 アウラのすごい(・・・)笑顔は、脅迫かそれに類する圧力なのかもしれません。今日の建国祭に参加したのも、その圧力の一環ではないでしょうか。

 実にありそうなことです。


(かかわらない方が身のためね)


 うん、忘れよう、と決めたその時――ふと気づいてしまいました。


 この六人、アウラと雰囲気が似ていないでしょうか。


 いずれも金髪で、かわいらしい雰囲気の美人です。背格好もほぼ同じ。同じ服を着て並んでいるところを遠目に見たら、誰がアウラかすぐにはわからないでしょう。

 それが理由だとしたら――きっと、ろくなことではないだろうなと、シルヴィアはご令嬢たちに同情してしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 『毒草』の時の令嬢たちキターーー!!!!(大歓喜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ