06 クーデターの首謀者
訳が分からない。
翔の脳内はその言葉で埋め尽くされていた。
翔の想像していた状況とまったく異なる。
翔はNPBの世界に迷いこんでしまったような状態だと思っていたのに、実際は神に見捨てられた世界で他人の体に入れられている状態だ。
その上、帰るべき自分の世界――地球まで、目の前の男の言と地にあるガスマスクから察するに無価値だと断じられたこの世界の一部になっている。
17歳の柔軟な頭でもさすがに理解が追いつかなかった。
「何言ってんだよ、あんた?」
翔は意図せずに口からまた言葉をこぼす。
男はこちらを睥睨すると首元に手を伸ばした。
「ふざけているのか……。お前」
「グ!」
ペルズナアーは翔の首を絞めながら持ち上げると、眼光の鋭い視線を翔の瞳に叩きつけてきた。
「ふん!」
一秒にも満たない間、そうするとペルズナアーは翔を床に放った。
「ゴホゴホ」
解放された気管が唾を飲み込み、せき込む。
「お前、本当に何も知らんのだな……」
ペルズナアーは訝し気な顔でせき込む翔を見つめた。
「お前は不気味だが、それでは陛下に危害を食わえることも思いつかんか。ならばどうでもよい」
血濡れの男は翔を罵倒すると踵を返した。
余りにも一方的でぞんざいなその態度にさすがにいら立つ。
「……クーデターの首謀者が、何で陛下の危害なんか気にしてんだよ」
翔は小さな声で小言を吐く。
するとペルズナアーは振り向いた。
「なんでお前がそれを知っている?」
――地獄耳かよ!
そう思いながら、翔は急ごしらえの言い訳を口から吐く。
「そんな悪人面なのに、クーデターを起こさんと思う奴の方が少ないだろう」
「ふん、単なる戯言か驚かせるな」
「戯言でも今の反応であなたがクーデタ―の首謀者だてことは確定したがな」
こちらがそういうとペルズナアーはこちらを凝視した。
イラついて減らず口を叩いただけだったが、これがペルズナアーを脅せる材料兼クーデタ―を思いとどまらせることもできるものだと気付いた。
今がチャンスだ。
「クーデターのことをパッパに知られたくないだろう。おれの要求に応じてくれよ」
「クーデターか、どうせすぐに行うのだからバレたところでなにも支障なぞないわ」
あっけからんとそういうとペルズナアーは再び踵を返した。
「むしろ、今こそ陛下が真の王として認められるにはちょうどいい。そうすれば、テラの者たちへの防備を盤石な物にできる」
ぼそりとそういうとペルズナアーは窓を利用して部屋から出っていた。