追憶⑦ 次元を斬る剣使い(4)
「魔力の無駄遣いが甚だしい奴だ。貴重な魔力をどれだけ消費すれば気がすむ」
ケロルはひどく機嫌が悪そうにそうつぶやく。
正論でも吐くかと思えば、魔力の心配か。
この男の基準がよくわからない。
ケロルは揺らめきながら、前方に進んでいく。
「蒼の魔導か……。お前を殺せば、魔法使いはこれで二人目だな」
「朱は我らの中で最弱。それしきのことで図に乗るな」
翔がおぞましいことを言うと、ケロルは四天王系列のテンプレの言葉を吐きながら、目の前から消えた。
「グ……」
苦悶の声を聞いて、そちらを見ると、翔が顎と腹から血を噴き出したいた。
信じられない光景だった。
あの魔王じみた男に瞬時に二回手傷を負わせたのだ。
それをやっただろうケロルを思わず凝視する。
その顔は何かを悟ったようで、凪の湖面を連想させた。
「チ……」
舌打ちをして、翔はカウンターを入れる。
ケロルはその剣に反応せずに、そのまま真っ二つにされた。
だが何事も起こっていないように彼は無傷だった。
「同じ次元にいないのに、俺にお前の攻撃が届くわけないだろ」
ケロルは青い顎を纏った拳を翔の顔に向けて、突き出す。
翔は避けたが、ケロルの拳から顎が射出され、肩を食いちぎられる。
自分を圧倒していた相手が、圧倒される様をなんとも言えない気持ちであたしは見つめる。
ケロルがなんとなく、強いことは認識していたがよもやこれまでとは。
とんでもないものの下についていたことを今更ながら、認識する。
「そうか、お前は違う次元にいるのか。じゃあ、次元ごと切り伏せればいい訳だ」
このままケロルが翔をなぶり殺しにするかと思うと、翔はそう呟いた。
体からケロルの顎の同質の黒い何かが噴出し、剣にまとわりついた。
「お前も俺達と同じか」
その様子を見たケロルがつぶやくと、ケロルの右肩が断ち切られた。
右肩は宙に舞うと、青色の光になって空に向かう。
「なるほど。朱を倒すわけだ」
ケロルはその言葉を最後にばらばらに解体された。
ばらばらになったケロルだったものは、青い光になって、肩と同様空に飛んでいく。
蒼の魔導が負けた。
そう認識するとあたしはささっと、その場から退散することにした。
あんなチートの塊みたいな奴に現時点で逆立ちをしても勝てるわけがない。
闘うだけ馬鹿を見るだろう。
それよりかは、また力をつけてから、挑むのがいい。
おおよそケロルもあの様子だと、死んではいないだろうし。奴にまた師事するか、他の魔導のところで師事を仰ぐかになりそうだ。
追って来ていないか、後方を振り返ると青いオーラに包まれた翔が見えた。




