04 危険人物
NPBの初期イベント。
魔界ディセント崩壊・大魔王パッパ崩御。
このイベントは先の戦争――裁定戦争の功績で魔界の主となったパッパを認めない一派とペルズナアー、主人公のパチオンが引き金になって起こるものだ。
翔は城の警備が硬く、脱出はとてもじゃないが難しいと考え、イベント自体を回避する方向に頭を巡らせているがいかんせん方法が見つからない。
主人公のパチオンの隣にいるのなら、まだ考えようもあるが、奴はマーチ姫の故郷、曲界アルヘイムの向こうの乱界ベルゼイア――ここから二つ先の国にいる。
城から脱出できないのに、二つ先の国に行けるわけがない。
行けるのなら翔は何も困っていないのだ。
月が東に向けて傾きかけているというのに、翔はまんじりともせずに頭を回す。
目をつむって黙考すると眠る可能性も否めないので、月に目を向けたまま、考えを広げ続ける。
「やはり、ここはパッパの手を借りるべきか……。でも奴をどうやって説得する?」
善良なパッパが生きる災害であるマーチ姫をそのまま外に出ることを許すとは思えない。
通常のマーチ姫はスキル『アポトーシス』で、彼女の関心を持ったものに崩壊状態――相手を消失させる状態を付与してしまう。
そのことを奴が考慮しないわけがない。
翔は今『アポトーシス』が機能していないが、そのことを言って聞かせても、国を亡ぼしかねない危険人物を野に放つことはさすがに善良なパッパでもしないだろう。
さて、どうしたものか?
パッパ姫にどうアプローチするか考えていると月が人型に陰る。
そう認識した時にすでに、血だらけのペルズナアーが部屋にあがっていた。