13 執事の処遇
「だぁ……。重い」
真夜中の大通りで翔は行動不能にしたペルズナアーを引きずっていた。
あれからこの男をどうしようか翔は思案したが、あそこに放っておけば事件として取り上げられることになるし、殺してしまうのは翔の倫理観的にアウトだったので、結局ペルズナアーをどこかに隠すことにした。
実際のところ、隠したところでことになるのは変わりない。
だが、本人をほったらかしにするよりは翔がやったということがわからない点で、まだましだった。
わかれば即断罪だが、わかなければ即断罪ということにはならないのだから。
「ああ、いかん。……一回休もう」
現状、翔がペルズナーを隠そうと試みは上手くいってない。
翔の体感で30分くらい経過したが、まだ路地裏の現場から20メートルくらい引きずれていない。
しかも結果は芳しくないというのに疲労はピークに達していた。
先ほどあり得ない挙動で動いたことと体力が一度二割まで落ちたことが原因だろう。
「なんだって、お前は城では見逃したのに今回は殺しにかかって来るんだよ……」
どうにもならない状態に陥ているせいか翔の口から愚痴がこぼれる。
「ふん、勘違いするな。前、見逃したのは陛下がお前のことを気に入っていて、お前がこちらに敵意を持ってなかったからだ。だが今回お前は武装してこちらに近付き、敵意を持っていることが明らかだったからな」
すかさずに憤懣やるかたなしといった感じでペルズナーは翔に反発した。
まあ確かにそうであったが、その口振りに翔はいら立つ。
「落ち着かんから武装する奴もいるだろうが。そっちこそ勘違いがひどい。お前がクーデターの大本だっていうのに『陛下のために』とか言って、言動ががばがばだから俺はそれについてどうゆうことなのか聞こうとしただけだ」
そう吐き捨てるように事情を言うとペルズナアーは、ギリリと歯ぎしりすると倒れた状態でそっぽを向いた。
「いくらなんでも、あんたクーデターの首謀者にしちゃ、パッパに親身になりすぎているだろ」
ペルズナーの行動を気にせずに翔はそう言葉を続ける。
すると反逆者は翔をナイフのように鋭利な瞳で睨みつける。
「親身にならぬはずがない……。あのお方の父君に俺は命を救われ、それ以来俺は陛下の父君を神、そしてその家族である陛下もその母君も神だと思っているのだから」
「じゃあなんでクーデターなんぞ企ててるんだ、あんたは?」
その言動の齟齬が更に強まったことに困惑し、翔は思わずそう問いかけた。
「陛下は優しすぎるからだ。陛下は陛下のことを良く思っていないとわかっていても奴らを見逃す。あれではいつ何時牙を剥かれてもおかしくない。陛下を害する奴らを一掃するためにクーデターが必要なのだ。俺が奴らを先導し、奴らともども反逆者として打たれれば、この国の膿を出し、陛下が国民に真の王であると認められる」
そこまで聞いて翔はこの男の何をやろうしているのか理解できた。
ペルズナーは自らを犠牲にして、主人の王としての道を開こうとしてるのだ。
翔はそれを理解し、目の前の反逆者を無害だと結論づけた。
「お前、何を……」
そしてペルズナーの傷、四か所にポーションを掛けた。
それをした翔をペルズナーは驚いた顔で見つめる。
「あんたはどうやら根っからのお人好しだ。だからわざわざ警戒する必要がない。隠すのもばかばかしい」
翔はそう言うと踵を返して、城に向けて歩を進め始めた。
「警戒する必要がない……? じゃあ、油断したままあの世に行け!」
それから過たずにペルズナーの言葉と共に翔は背後に冷たく硬い感触を感じた。
だが刃は薄皮一枚切らなかった。
「問答無用で切りかからないと人を切れない奴が。言葉を交わした人間を切れるわけがないだろうが……」
翔の口は一人でにそう冷めた調子で言葉を紡いだ。
翔自体言うつもりはなかったが、口がそう動いた。
何だか胸糞の悪い気持ちになり、ペルズナーの方を振り返らずに翔は城に向けて歩をまた動かした。




