第八十五話 合宿②
「さあ、懺悔の時間だよ」
部長はどこから持ってきたのか分からない竹刀をもっておれたちの前に君臨していた。威圧感が半端ない。空気がどんどん冷たくなっていく。
「ええとですね、これは……」
「はい、斬首」
おれが言い訳をする前に即刻、死刑宣告がだされてしまう。
「えええええ」
「目がさめたら、葵ちゃんが横にいたとか言うんでしょう。そんなラブコメありえません」
今日の部長はいつになく厳しい。
「違うんですよ、部長。わたしが横で寝ちゃっただけなんです。それで、胸をにぎ…… たからビックリして大声をあげちゃって……」
「そもそも葵ちゃんがどうして桂太くんの部屋に?」
「将棋を教えてもらおうと思ったら、桂太先輩寝ていて…… 文人先輩が、コンビニ行ってくるから留守番していてって言われて。桂太先輩の寝顔を見ていたら、わたしも眠くなっちゃって……」
「同罪よ。この清楚系○○○いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
部長は、ハッスルしていた。今日も将棋部は平和です。伏字は、放送禁止用語につき自主規制させていただきます。
※
「まったく、葵ちゃんは油断も隙もないんだから」
わたしたちは、ホテルの温泉に入っている。桂太先輩のお説教は、1時間ほどで終了した。
「今後は気をつけます~」
わたしは、しゅんとなってボコボコと顔の半分をお湯につけた。
「わたしも、寝ている間にそんなことがあったんですか」
かな恵ちゃんは、ちょっとだけ動揺してそう言った。
「本当よ。わたしたちが、いがみ合っていたら、いつか葵ちゃんに漁夫の利をとられて、桂太くんがとられちゃうわよ」
「うう」
ふたりは、危機感を共有したようだ。心配しすぎてるだけじゃないのかな~ たしかに、桂太先輩は優しいし、頼りがいもあるし、将棋も強いし……
あれ、結構、魅力的かもしれない……
そんなことを考えていると、かな恵ちゃんは少しだけ恥ずかしそうに胸を隠した。
「あれれー、どうしたんですか? かな恵ちゃん?」
部長はめざとく気がついてその仕草を指摘する。
「もしかして、わたしと葵ちゃんのナイスボディに怖くなっちゃった?」
「ち、ちがいますよ」
「そう? でも、桂太くんって、大きい方が好きかもよ~ 今日だって、葵ちゃんのを無意識でもんでたし…… わたしが押しつけたら悲鳴あげるし」
部長、いつになくガジガジ攻めていく。
「うー」
いつもはクールなかな恵ちゃんが、顔を真っ赤にしていた。
「くすっ、かな恵ちゃんはかわいいな~」
「もう、小さい人のほうが、大きいなんてずるいいいいいいいい」
いつものかな恵ちゃんじゃない姿を見ることができました。




