第八十四話 合宿
「ついに、来ましたね」
「そうね」
ゴールデンウィーク真っ最中の混雑している中おれたちはついに合宿の目的地「熱海」に到着した。
電車に揺られて早3時間。やはり、連休中の観光地はとても混雑していた。しかし、着いてしまえばこちらのものだ。宿は予約してあるし、あとはゆっくりして、みんなで将棋をしまくるのだ。
「じゃあ、とりあえず、ご飯にしましょう。今日は海鮮三昧よー」
おれたちは、駅前の食堂へと向かった。ガイドブックの写真が最高に美味しそうだったから、とても楽しみだ。
※
「ふうう、疲れたな」
おれは文人に話しかける。結局というかやはりというかおれたちはホテルの男部屋に泊まることとなった。
「高柳先生は、自分の金で一人部屋取ったみたいだしな。今日はゆっくりできるな」
「先生と一緒だと、さすがに緊張するし」
「先生もひとりで自由に酒が飲みたいだろうし」
「一石二鳥」
ホテルに着いたので、しばらく自由時間となっている。お昼に海鮮丼(先生のおごり)を食べたので少し眠い。
「どうする? 観光でもいく?」
文人はまだ元気そうだ。
「ちょっと休憩してからにしようぜ」
おれは、朝から動き続けたので疲労困憊だ。
昼寝をしようと目を閉じた。
※
目がさめた。部屋は少し暗くなっていた。思ったよりも寝てしまったらしい。
おれは、寝返りをうつ。もう少し眠っていたい。二度寝をするき満々のおれは布団の中でごそごそした。
ふにゃ。
なにか柔らかいものに触れた。マットレスか枕かとも思ったがこんなに柔らかいものがあるわけがない。まさか……
おれが目をしっかり開けるとそこにはスヤスヤと眠っている小さな後輩がいた。なぜに!? どうして、葵ちゃんがっ…… 普通はこういうラブコメのお決まりイベントは部長のはずなのに。いや、そんなことを考えるのもおかしいけどさ。
あわてて手を放そうとするものの葵ちゃんの手が邪魔で動かせない。えっ、えっ。動揺してやわらかいものをわしづかみしてしまう。
いや、わざとじゃないんですよ。本当に
「ふわあああああ。あっ、桂太先輩、おはようございます」
葵ちゃんはまだ寝ぼけているようだ。
そして、おれの手に気がつく。
「って、きゃああああああああああああああああああああああ」
これはやばい。おれは即座に判断した。
「いま、葵ちゃんの悲鳴が聞こえたけど何事?」
部長がおれたちの部屋に突入してくる。ですよねー
「って…… なにしてるの? ふたりとも?」
その目は、冷たくゆがんだものに変わっていた。




