第八話 ゲームと虐殺
「さあ、はじめますよ。桂太さん」
「おう」
そう言って、おれたちはゲームを起動する。かな恵さんが、リビングにゲームを持ってきてくれた。
ちょっと前に出た、テレビでも携帯機としても遊べる最新ハードだ。
「レースと対戦どっちがいいですか?」
「じゃあ、対戦ゲームで」
「はい」
そういって、彼女が選んだのは、有名ゲームのキャラクターたちが会社の壁を乗り越えて集まり、大乱闘しスマッシュする有名な対戦ゲームだった。
おれは、ピンクのフワフワするかわいいキャラクターを選び、かな恵さんは国民的人気アニメの主役、黄色い電気ネズミを選択した。
「とりあえず、肩慣らしに操作の練習をしましょう」
そう言って、彼女とのタイマン勝負となる。一応、少し前のシリーズを友達の家でやったことがあるので、大丈夫だろうと高をくくっていた俺だったが……。
結果は、暴力による蹂躙だった。
おれが攻撃をしようとしても、簡単に避けられてしまい、カウンターで投げ技をくらうのを繰り返す。なんとか、かすり傷をつけられたと思った矢先、電気ネズミのスマッシュ攻撃で、おれのピンクのフワフワは、画面場外へとたたきつけられた。
うちの妹、顔に似合わずデスパレードな妹すぎる。
「ああ、楽しかったですね。もう一戦いきます?」
「いや、強すぎでしょ。どうしてそんなにうまいんだよ」
「私、凝り性なので、よく大会とかにもでているんですよ」
「そうならそうと言ってよーライトファンの身にもなって」
これが上級様かー。
おれは完全に初心者刈りで養分とされたようだ。
「ごめんなさい。ちょっと悪ふざけしました。対戦以外にも協力プレイできるモードがあるので、安心してください」
「そうなんだ」
ちょっと安心した。このまま虐殺が続いたらどうしようかと……。
「これです」
そういって彼女が選択したのは、コンピュータを100体倒す協力プレイモードだった。
倒すと次々と湧き出す相手を場外に落とし続ける練習モードだ。
おれたちは順調に、敵を倒し続けた。とはいっても、ほとんどかな恵さんの実績だったが……。
「よし、あと最後の一人ですよ」
おれのキャラクターがぷかぷかと宙を舞っている間に、怒涛の攻撃をしていたかな恵さんが叫ぶ。
「やっちゃってください、かな恵さん」
「わかりました、それ」
「よし、はじめての共同作業だ、なんちゃって……」
「えっ」
かな恵さんのキャラは、的を外してなぜか場外へと駆け出して行った。復帰行動もとらずにそのまま落下する。
「ゲームオーバー」
画面では、その文字が躍っていた。
「ごめん、おれが変な……」
「すいません。汗で手が滑りました」
おれが謝罪しようとすると、彼女の声でさえぎられた。
「いや、おれのせい……」
「違います、汗です、汗。少しドキッとしちゃったとか、そんなんじゃないんですよ。けっして違いますからね」
「お、おう」
「ちょっと、顔洗ってきますね。あー熱い」
彼女の顔は、真っ赤だった。
次回は、ガッツリ将棋回です。