第七十五話 学級裁判
「桂太は、ゴールデンウイークはどうするんだ?」
クラスメイトが雑談中に聞いてくる。ちなみに、こいつは彼女とデートらしい。うらやまけしからん。完全にマウントを取りに来ていやがる。
「えっと、将棋部で合宿だよ。熱海の温泉」
しかし、おれにも予定があるのだ。どうだ驚いただろう。彼女とデートよりも魅力は低いかもしれないけど、かなり豪華なカードになっているはずだ。
「はぁあ?」
「……」
「……」
さっきまで談笑していた男たちの顔が凍り付いていた。なにこいつら怖い。ホラー映画のような反応するなよ。
「リア充爆発しろ」
「裏切者には死の鉄槌を」
「……(失神)」
阿鼻叫喚の惨劇が繰り広げられれている。
「どうしたんだよ? 単なる合宿だぜ、部活のさ」
「ほー」
「へー」
「ちょれい」
なんか変な掛け声入っていたよな。
「桂太くん。判決を前に言い残したことはないかね」
謎の裁判長が登場した。
「そうだよ、桂太くん。まだ情状酌量で刑を軽減できるから」
弁護人が弁護を放棄している。
「極刑を。極刑を望むわ」
検察官は狂気の主張をしていた。
「えっ、部活の合宿でどうしてそんなに言われないといけないんだよ」
おれは当然の疑問を法廷にぶつける。
「検察官どうぞ」
「はい」
下手な茶番だ。
「では、桂太くん。キミの所属している将棋部の女子メンバーを思い浮かべなさい」
えーと、部長にかな恵に葵ちゃんに……
「その女性メンバーの顔はどうかな? スタイルは? 性格は?」
検察官はどこにいくのだろうか。ヘンテコな茶番劇が進んでいく。
おれは、みんなのことを思い浮かべた。
「裁判長、ぼくがやりました」
そして、自然に沸き上がった言葉を口にした。そうだ、みんな美少女だった。
「わかればよろしい。判決を言い渡す」
ああ、おれはなんてことを言ってしまったんだ。陪審員も含めて、ほとんど非リアのこのグループで。
「死刑」
おとこたちがおれに飛びかかってきた……
「上告する。上告するうううううううううううううううううう」
「もちろん、却下だ」
非常な裁判長の判断がおれを絶望に追いこむ。
「どうしておれなのか?」
必死に叫ぶものの、誰も耳を貸さない。
「やっちまいな」
なぜか弁護人まで、執行者の側に回っていた。
「は・な・せ、うわああああああああああああああああああ」
※
全身をくすぐられておれはグロッキーとなる。あやうく、笑い死にするところだった。
「ところで、桂太はほんとうは誰が本命なんだよ?」
「えっ」
あらぬ方向から飛んできた質問におれは声を失った。




