第七十三話 下馬評を()
翌日。おれたちは、いつものように部室へと集まっていた。部長は、少しだけ機嫌が悪そうだった。まあ、昨日の放置プレイが利いてるんだろう。かな恵も言わずもながだし。さて、今日も部活、部活。おれは、葵ちゃんとの詰将棋マラソンの準備を整えはじめる。参考書を開いて、休憩用のチョコとお茶を配置。今日も完璧だ。
「みんな、部活の前にちょっといい?」
部長は、ため息をついてみんなにプリントを配った。
「これは?」
「みればわかるでしょう。合宿の予定表を昨日、徹夜で作ったのよ。おかげさまで、目にクマができちゃった」
部長が一晩でやってくれました。そのスケジュールはとてもしっかりしていた。やっぱり、部長はやればできる子だ。いつもこうだったら、最高なのにな……
※
将棋部合宿スケジュール
1日目
8:00 駅集合
8:30 出発
12:00 熱海到着、昼食
13:00 ホテルチェックイン
13:00~18:00 自由時間
18;30 夕食
20:00 集まって練習
23:00 就寝
2日目
7:00 起床
7:30 朝食
9:20 沢藤高校訪問
9:30~16;30 同高校で練習試合
18:00 夕食
19:00~21:00 反省会
21:00~23:00 自由時間
23:00 就寝
3日目
7:00 起床
7:30 朝食
9:00 チェックアウト
10:00~15:00 市内観光
15:30 駅出発
19:00 駅到着、解散
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「えっ、練習試合?」
2日目のスケジュールをみて、おれは驚く。だって、そんなこと聞かされていなかったし……
そして、その相手も……
まさか、ここまで大物との練習試合を企画しているなんて。一体どうやって?
「わたしのコネクションを使って、練習試合をねじこんだのよ。去年の全国大会のときに仲良くなった子がいたから、その子にお願いしてね」
部長はおれたちの疑問を知ってか知らずかそう説明した。この部長、いつになく有能だ。
「部長……」
「なに、みんなわたしのことを見直した? なら、もっと敬いなさい。この敏腕経営者をね……」
そんなドヤ顔をしている部長のもとにおれたちが集まる。
「悪いものたべたりしませんでしたか?」
「本当に部長ですか?」
「頭打ったり、熱とかありません、大丈夫ですか」
「まさか、偽物?」
おれたちは、最高の賛辞を彼女に送った。
「みんなでわたしのことをばかにしてええええええええええええええええええええ。がんばって徹夜したのにいいいいいいいいいいいいいい」
そう言って、勢いよく机に頭をぶつけて突っ伏していた。
あっ、やっぱり、本物の部長だ。




