第七十話 ゲーム
「せっかく、みんなで集まったので、ちょっと遊びにいきもせんか?」
葵ちゃんが健気にそう言った。
「いいねー」
おれたちは、うなづいて同意する。
「じゃあ、ゲームセンターで遊びましょう」
おれたちは近くのゲームセンターに移動した。
「なにする?」
ふたりともゲームセンターにはあまり来たことがなさそうだったのできょろきょろしていた。
「レースゲームしたいです! この前テレビで見たんで!」
葵ちゃんがそう言った。
「じゃあ、このゲームにしようか?」
おれが選んだのは、有名な配管工がカートでレースするゲームだ。これなら、かな恵もゲーム機で遊んでいたし、運も絡むから初心者の葵ちゃんも楽しめるだろう。
「いいですね~」
「楽しそう」
おれたちは、100円を入れてゲームを開始する。
※
「かな恵ちゃん、強すぎ」
「なんで、このゲームで毎回優勝できるんだよ」
3回ほど遊んだが、すべてかな恵がぶっちぎりで勝っていた。おれと葵ちゃんは、2位と3位を交互に取る感じ。
「これ、持ってるゲームでやったことがあるステージだったんで」
彼女はそう言いながら今日、いちばんの笑顔だった。
※
「じゃあ、ふたりとも今日はありがとうございました」
夕方になったので、おれたちは解散となった。
「こちらこそ、ありがとうね」
「お父さんにもよろしく言ってね」
おれたちは、そう返した。
「はい!」
葵ちゃんは元気にそう言って帰っていった。
※
「……」
ふたりきりになると、かな恵は黙ってしまった。
やっぱり、怒っているみたいだ。
「かな恵?」
「……」
やっぱり、口を開いてはくれなかった。
「かな恵さん?」
「……」
以前の呼び方でもダメだった。
「かな恵ちゃん?」
葵ちゃんのような呼び方を試してみる。反応があるはずがないと思っていた。
「ばか」
彼女は口を開いてくれた。
「ありがとう」
「なんで、そんなことを言うんですか?」
「声を聞きたかったから……」
「本当にバカですね。兄さんは?」
彼女はそう言いながら笑いはじめた。
おれもつられて笑い出してしまう。
「本当にばかですよ、兄さんは。このワガママ妹のご機嫌をとるために、必死になって」
「だって、しょうがないだろう? 心配だったんだから」
「まだ、兄妹歴1か月なのに、もうシスコンに目覚めちゃったんですか?」
「ノーコメント」
「それは、無言のイエスです」
そう言って彼女は笑う。よかった、もう怒ってないようだ。
「兄さん?」
「ん?」
「帰る前に、寄りたいところあるんですけど……」
「いいよ、どこ?」
「告白したカップルが幸せになる公園です!」
まだ、許されてなかったのかもしれない……




