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第六十九話 カフェにて

「うわ~おしゃれなカフェですね~」

 葵ちゃんは元気にそう言ってる。たしかに、ここはおしゃれなウッドハウスだ。ご飯だって美味しいし……


「やっぱり、うわさに聞いていた通り本当におしゃれだね。わたしも、恋人とここに来たいな~」 

 あれ、なんか意味深な発言をしているひとがいるな。それはもちろん、かな恵なんだけど……

「いいね~ わたしも優しくて頼りがいがある彼氏とデートしたいな~」

 そう言って、おれをちらちらみる葵ちゃん。そして、その様子を見ながら苦い顔をするかな恵。ごめんなさい、こういう時どんな顔をすればいいのかわからないの。そんなネタに走って、逃げ出そうとするおれ。3者3様の反応を見せながら、おれたちは席についた。


「かな恵ちゃんは、なに食べる~? わたしはハンバーグプレートにしようかな?」

「煮込みハンバーグか~ 美味しそうだね。じゃあ、わたしは、マグロとアボカドの丼にしようかな?」

 ぶほっと水をのどにつまらせそうになる。偶然だよな。偶然、昨日、部長が食べたメニューを選んだだけだよな。


「ああ、でも、しょうが焼きプレートも美味しそう。彼氏と半分ことか一口あーんとか、憧れるな~ ねえ、兄さん?」

 ある特定のシーンをおもいうかべて、言葉を発しているようなかな恵に恐怖をおぼえた。偶然、部長とデートしたカフェに行きたくなって、たまたま、部長と食べたメニューを食べたくなって、もう本当にたまたま偶然、一口あーんなんて言葉が出ただけだ。きっと、そうに違いない。それなんて、天文学的な確率なんだろうな~、はは。


「うん、憧れる~ いいな~」

 葵ちゃんはなにも知らない笑顔でそう言っていた。ああ、守りたいこの笑顔。無垢な笑顔が、唯一のこころのオアシスだ。


 メニューがはこばれてきた。おれは、クラブサンドで、かな恵はトマトパスタ、葵ちゃんはハンバーグプレートを注文した。


「ああ、おいしい」

「おいしい」

「うん、やっぱりおいしい」

 おれたちは次々と美味しいを連呼する。


「あれ、兄さん? いま、「やっぱり」って?」

 かな恵が冷たい突っ込みをいれてくる。やばい、ぼろをだした。


「ええ、そんなこと言った? おぼえてないな~」

 おれは、がんばって誤魔化した。


「そうだ。桂太先輩? ひとくち食べませんか? はい、あーん」

 葵ちゃんがそう言って、ハンバーグを差し出してくる。おれは反射的に口を開いた。


「美味しいですか?」

「うん、おいしい」


 無意識な発言だったが、これがかな恵のボルテージをあげることになってしまった。


 大丈夫かな。おれのすね。

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