表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/531

第六十六話 朝

 眠れない夜が終わり、朝がきた。

 結局、ほとんど眠れなかったおれは、詰将棋マラソンをすることで暇をつぶしていた。とりあえず、今日が祝日でよかった。まだ、明日への対応を考える時間があった。


 そろそろ、朝食の準備でもしようかな。そう思ったおれにスマホの着信音が襲いかかる。


 まさか、部長?

 おれは、おそるおそるスマホを見つめる。

 メッセージの送り主は、葵ちゃんだった……


 ※


おはようございます。突然連絡してしまってごめんなさい。今日って時間ありますか?


 ※


 デジャブを見ているような気分になる。まさか、またデートか……

 おれのモテ期がきたのかもしれない。


 とりあえず、すぐに返信する。

「大丈夫だよ。なにかあった?」


 すぐに返答があった。

「将棋の本を買いたいので、一緒に選んでもらえませんか? その後、かな恵ちゃんと3人で遊びましょう」


 あっ、よかった。今回は普通の遊びの誘いだ。

 ちょっとは気分転換になるだろうし、行きたい。おれは即座にOKと連絡した。


 おれは、そのまま、朝食を作りに台所へと向かった。そして、熱いコーヒーを淹れよう。


 おれとかな恵は駅で、葵ちゃんを待っている。

 かな恵は、いつもよりもカジュアルな服装になっていた。昨日の部長との対局の後から、少しだけ落ち込んだ雰囲気になっていたので、声をかけにくかった。


「兄さん?」

 そんなおれを気にしたのか向こうから話しかけてくる。


「なに?」

 おれは、おそるおそる返答した。

「昨日は、楽しかったですか?」

 昨日の闘志あふれる声とは違って、かなり弱弱しいものだった。


「うん、楽しかったよ」

 おれは正直に答える。


「そう、ですか」

 彼女の表情は少しだけゆがんでいた。


「……」

「……」


 気まずい。昨日からとても気まずい。


 その後からはまた、無言の時間が続く。

 とても気まずい……


「ふたりともおはようございます。お待たせしちゃいましたか?」

 そこに天からの救い。葵ちゃんが来てくれた。


「ううん、いまきたところ」

「よかったー」

 クラスメイトのふたりで話がどんどん進む。今日は、おれはうんうんと聞いているだけでよさそうだ。


「桂太先輩も今日はよろしくお願いしまーす」

 そう言って葵ちゃんはおれにとびかかってくる。いつものスキンシップだ。本当に可愛い後輩とのじゃれつきなんだけど……


 いつものスキンシップなんだけど……


 それをみるかな恵の目が……

 いつもの目じゃなかった……


 冷たい、冷たい、視線がおれを貫いた。

 あれ、今日がおれの命日かもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ