表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/531

第六十一話 死闘!部長vs義妹

 ご飯を食べた後に、わたしはかな恵ちゃんの部屋に向かった。

 そこは、かなりファンシーなお部屋だった。かわいいぬいぐるみと、おしゃれな小物雑貨。アロマな香り。この部屋の主が将棋好きな痕跡はほとんどなかった。


「かな恵ちゃん? 将棋の本とかおいてないの?」

 そう、盤はあるのだけど、棋書は一切おいていない部屋にわたしは驚く。


「ああ、それは電子書籍で持っているんです」

 なるほど、だからこんな女子力の高そうな部屋になるのか。私の部屋には、『山井九段実戦集』とか『四間飛車の狙い81』とかいかつい本が並んで、女子力を下げているというのに…… こんな女子女子した部屋が同じ部屋にあったら、間違いなく桂太くんに悪影響がでてしまう。なにか、手を打たなくては……


「じゃあ、部長やりましょうか? ルールはどうしますか?」

「遅くなっちゃうから、10分切れ負けでどう?」

 わたしは、そう提案する。切れ負けとは、時間が無くなったら負けになるルールだ。今回の場合は、10分の持ち時間を使い果たした場合は、どんなに将棋が勝勢でも無条件で負けとなる。短時間で将棋をする場合によく使われるルールだ。


「わかりました。では、お願いします」

 そう言って、彼女はベッドの下から盤を取り出した。やっぱり、立派なものを使っている。彼女なら、当たり前なんだけど……


 わたしたちは、急いで駒を並べた。はやる気持ちが抑えられない。


「ああ、ふたりとも将棋やってるんだ? おれも見学するね」

 下の片づけが終わった桂太くんが、様子を見に来た。これで余計に負けられない。わたしの闘志に火がついた。


「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 わたしたちは大きな声であいさつする。ここで負けられない。お互いに気合が入った挨拶となった。


 ※


 わたしが後手だ。

 いつものように、お互いに角の通り道を開ける。

 わたしは毎度のことながら、四間飛車を目指す。かな恵ちゃんは、どこかで奇襲を採用してくるだろう。そのとき、どう対応するか?

 

 そんなことを考えていた。

 しかし……


 彼女の構想力は、わたしを上回るものだった。

 3手目、角交換…… 彼女が目指したのは、禁忌(タブー)に近い手法だ。


挿絵(By みてみん)


 先手一手損角換わり。

 将棋の入門書では、初心者がやってはいけない指し方として必ず紹介される一手。


 先手にもかかわらず、一手損してしまう指し方だ。これを採用するということは、手損よりも自分が得意な戦法にもちこんでやるという考えだろう。


 そうすると、採用される戦法として考えられるのは……


 筋違(すじちが)い角。

 アンチ振り飛車戦法だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ