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第五十六話 でーと?③

「それでは、山井九段の登場です。みなさん、大きな拍手でお迎えください」

 集まったのは小学生からお年寄りまで……。老若男女たちだった。それはど、山井九段の人気はあるということだろう。この道場にこんなにひとがいるのは本当にめずらしいことだ。大きな拍手が鳴り響く。


「みなさん、紹介にあずかりました山井です。席主さんとは、古くからの友人なので、来て()()()()()()

 その一言で、会場がクスリと笑い出した。彼は軽快なトークが持ち味だ。それが人気の秘密でもある。


「今日は指導対局と、四間飛車講座をおこなう予定なので、みなさん楽しんでください」

 わあああとまた大きな拍手が起きた。四間飛車の大家の講座だ。嬉しくないわけがない。


「それでは、今日は歴史の中の四間飛車ということで、定跡の進歩を簡単に振り返っていきたいと思います」

 講座がはじまった。


 そこでは、昭和の名勝負が語られる。今では廃れてしまった形や珍しい形も語られる。

 四間飛車偽装の雲隠れ飛車、四間飛車と木村美濃の組み合わせなどなど。


 名人戦で大活躍する四間飛車。居飛車側の対策との攻防。天敵「居飛車穴熊」。救世主「藤井システム」。


 みんな興味津々の講座が続いた。


 ※


「それでは、15分休憩の後に、指導対局となります。みなさん、少々お待ちください」

 

「いやーおもしろかったですね」

「うん、最高だった」

 部長はまるで、小学生のような目になっていた。それもそうなんだが……。だって、部長は、山井九段の大ファンだし…… 山井九段にあこがれて、四間飛車を使うようになったと昔、言っていた。憧れのひとに会えたのだから、喜ぶのは当たり前。


 でも、どうしてだが、それが嫌な気分になる。部長が嬉しそうにしているのを見るのが嬉しいんだけど、嬉しくない。なんて、女々しい考え方だろう。たぶん、ほかの男のひとに彼女が憧れているのが、たまらなく悔しいんだと思う。


「それでは、指導対局をはじめます。みなさん、席にお願いします」


「部長は、手合いはどうしますか?」

「席主さんが、角落ちがいいんじゃないかなって言うからそれにするよ。桂太くんは?」

 プロの九段に角落ちか。すごいな……。月並みだが、そんな言葉しかでてこなかった。ただ、部長にはそれだけの実力と期待があるということだろう。


「じゃあ、おれは2枚落ちにします」



―――――――――――――――――――――――

用語解説&トリビア


角落ち……

将棋のハンデ戦の一種。強い方が角を抜いて戦う戦い方


2枚落ち……

将棋のハンデ戦の一種。強い方が飛車と角を抜いて戦う戦い方


簡単にわかる四間飛車の歴史


①現存する最古の棋譜が四間飛車(1607年)

②江戸時代も歴代の強豪たちに愛用される

③江戸中期くらいから、四間飛車をはじめとした振り飛車がやや下火となり、その後は表舞台から遠ざかる

④戦後すぐに、プロ棋士「大野源一」が振り飛車を復興させる

⑤大野の弟弟子である、大山康晴・升田幸三が振り飛車を採用。名人などのタイトルを総なめ。

⑥居飛車側は棒銀や山田定跡などを使って、攻めまくる振り飛車対策が考案されるが、振り飛車の防御力に大苦戦

⑦攻撃がダメなら、こちらも固くすればいいじゃないかと、次の対策が生まれる

「居飛車穴熊」の登場

➇「穴熊」によって振り飛車の冬の時代

⑨「穴熊」対策のために、四間飛車からは藤井システムや角交換四間飛車などの戦法が派生する(←いまここ)


ざっくり、まとめるとこんな感じの歴史になります。かなり大雑把な説明ですので、詳細を知りたい方は検索してみてください。

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