文人アフター⑬
これは本ラブコメ最後の対局描写になると思います。
楽しんでもらえると嬉しいです!
先手が桂太で、俺は後手。
いつものように、相居飛車の序盤となった。
俺は、普通の角換わりではなく、一手損角換わりへと誘導する。
そして、俺は後手から角交換をおこなった。
これが、俺が仕組んだ王殺しの一手だ。
一手損角換わりは、勝率が安定しないが、誘導しやすさはぴか一だ。俺は幸運なことに、後手番を引いたから、この切り札を使うことができる。
「一手損角換わりか……2年生になった時の最初の対局の時もそうだったよな」
「ああ、あの時は、俺と桂太と米山先輩の3人しかいなかった」
「あそこから、すべてが始まった気がするよ。俺と文人と先輩、かな恵、葵ちゃん。この半年間は夢のような時間だった」
「俺もだよ、桂太」
桂太は、俺の一手損角換わりに対して、定跡どおりに早繰り銀に組んだ。
そうここまでは、すべて計画通り。俺たちは駒組を進めていく。
そして、この駒組を見た時、桂太は手を止めた。
「羽これが、文人の隠し玉だな?」
「ああ、そうだよ。親友。これが、桂太を倒すことができるかもしれない俺の切り札"羽生流右玉"だ」
伝説の名人の名前を冠した切り札。ラストバトルに一番ふさわしい戦法だろ?
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用語解説
羽生流右玉……
羽生善治九段が得意としている右玉。一手損角換わりの天敵である先手早繰り銀対策に使われる。




