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文人アフター⑦

「すごい……文人くんさらに強くなっている」

 元部長は驚きの声をあげる。たしかに、3カ月ぶりくらいに文人の将棋を見たらおどろくだろうな。

 老獪な指しまわし、安定感あるバランス将棋。


 葵ちゃんすら、戸惑うほどの力強い将棋だった。

 こりゃあ、ひょっとすると食われるかもしれない。

 俺は内心で焦りが生まれていた。


 ※


 お互いの王の眼前で起こる大混戦は、着実に葵ちゃんを追い詰めている。

 だが、冷静さを失うわけにはいかない。失ったら最後、葵ちゃんの終盤力に虐殺される。


 葵ちゃんが、逆転を狙い無理攻めを敢行した。俺は、受けなくてはいけない。


「(俺には、桂太や米山先輩のような、受け将棋の特別な才能はない。でも、真似をすることならできる。あの超高校級の受け将棋だったふたりを一番近くで見ていたのは俺なんだからな!)」


 泥沼じゃなくて、湿地帯くらいだろうな。でも、桂太のように広さを活かした受け将棋と、米山先輩の駒を増やしていく受け将棋の中間くらいになればいい。


 将棋で勝つためには、天才的な手を無理に指す必要はないんだ。

 基本となる手を積み重ねることができれば、勝てる。


「(そして、それが、俺のような凡人の生きる道!)」


「中庸の徳たるや、それ至れるかな」

 俺は倫理の授業でならった儒教の言葉を思い出す。


 足りすぎても、足らなすぎてもダメなんだ。ちょうどいいところを目指す。それが、俺の生き方。


 才能がありすぎる桂太や葵ちゃんでは、こんな戦い方はできないだろう。だから、俺しかできない将棋を目指す!


 基本に着実に、俺は葵ちゃんの攻めをとがめ続ける。派手さはないが、堅実で負けない将棋。


 それが俺の将棋だ。


 憧れの人に追いつけるように、努力だけ続ければ、その努力はいつか才能すらも超越する。


 夢物語かもしれない。でも、それくらい信じたっていいだろう?


「負けました」

 俺は、天才を軍門に下す。すべては玉座に近づくために……

文人アフターは、昔の話と対比になっていますので、探して違いを見つけてもらうとさらに面白くなると思います(^^)/

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