文人アフター③
「巨大な俺たちの学校も、内部に充満する人的エネルギーによって飽和状態に達するようで、この青春をかけたお祭り騒ぎを佐藤桂太はのちに細部まで思い出す事が出来た」
俺の隣で、桂太が何かを言っている。というか、ほとんど銀英〇のパロディなんだけどな。それに、完全に死亡フラグで、死ぬの俺じゃん。
「最近、サブスクで古いアニメを見るのにはまっててさ」
桂太は俺が元ネタに気がついたのと分かって少し恥ずかしそうな顔になった。
まあ、文化祭当日だ。
浮かれるなというのが無理だとは思う。
「とりあえず、部員の対局はずらして設定して、ひとりが運営兼記録係で、残った二人が大盤解説でいいんだよな?」
「ああ、香先輩も1日だけ復帰してくれて、なじみの道場から大盤も借りられたしよかったよ」
「途中で、ニヤニヤ動画の名物企画お昼当てコーナーや対局者におやつを出すのも企画するとか、ずいぶん力を入れたな」
「だって、将棋と言えば、将棋飯だろ。鴨矢倉さんとかサーティーンとか……いろんな人に頼んで、CMの代わりになるから無料で屋台のご飯を差し入れしてもらえることになったしな」
「いつから、こんな人脈を……」
「やっぱり部長になると結構違うんだよ!」
「それに、かな恵と葵ちゃん、香先輩という美少女が解説してくれるんだ。数字が取れないわけがない!」
いつから桂太はこんなにゲスな奴になってしまったんだ。とはいっても、今のままだと団体戦に出るのが難しいから、手段を選んでいられないとはいえ……
まぁ、いっか。
俺も青春の1ページを楽しもう。
でも、まさかこの文化祭が、人生における大事な分岐点であることに、俺はまだ気がついていなかった。
本日の更新は終わりです。




