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香IF⑭

「負けました」

 土浦副部長の穴熊は無残に崩壊し、私への猛攻もあと一歩で届かなかった。


 最後は、歩を打ちこんで猛攻はストップ。私は大金星を獲得し、本戦トーナメントへの切符を手に入れた。


「なるほどなぁ」

 副部長は、ため息をつきながら負けたことを実感し、落ち込んでいる。「冴えんかったわ~」との自虐がなんとも悔しそうだ。


「ありがとうございます。副部長の助言で、何かを掴んだ気がします」

「おいおい、俺は武田信玄になるつもりなんてなかったんだぞ? 上杉謙信なんて育てても、自分の脅威になるだけだしな」

「そういえば、先輩は文学部でしたね~」

「まったく、余計なことを言っちゃったわ。これで自分が予選落ちとか笑いものだわ」


 ※


「振り飛車冬の時代とはよく言ったもんだよ。エルモ急戦・金無双急戦・ミレニアム・端歩突き穴熊・穴熊。最新の将棋ソフトを使ったすべての戦型で、四間飛車は後塵を拝している」

「おまえは、ずっと四間飛車の専門家だったそうだな。だが、このリーグはそれ一本で戦えるほど甘くはない。四間飛車だけでは、絶対に限界がでてくるぞ?」


 ※


 少し前の感想戦で言われたことを思いだした。


「私は四間飛車一本で行こうと思います!」

「だよな、これが米山の答えだろう?」

「はい! 私は、四間飛車一本でいきますが、ノーマル四間飛車一本ではいきません!」

「なるほどな。あの陣形から、相手の陣形を見て、美濃囲い・金無双・振り飛車穴熊・右ミレニアムを使い分けるのか……」

「バレましたか! その通りです。これなら相手の居飛車穴熊もかなり制限を受けますし、相手の急戦策にも持久戦を選択することができます」


「攻撃の主導権を確保するか、固さ勝ちを確保するかギリギリまで選べるのか。どちらをとっても四間飛車にとっては悪くない序盤に誘導できると?」

「そういうことです。無策に居飛車穴熊を作られたら四間飛車側は、作戦負けになる。だから、こっちはそれを防ぐために、ギリギリまで作戦を保留し、相手を動揺させるんです」


「このシステムを短時間で、完成させたのか? ひとりで?」

「さすがに、ひとりでは難しいです。協力者は、います……」

「そうか……誰かは聞かないでおいてやるよ。まぁ、なんとなくの検討はついているけどな!」

「察してください!」

「そうか、なら、お幸せにな……」


 そう言って、先輩は去っていった。


 私は桂太くんを見つめる。

 彼は優しく笑っていた。

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