498/531
香IF⑪
私は端歩を突く。これは打診だ。あなたは、穴熊にしますか? どうしますか?
相手が同じ様に、端歩を突いてきたら、居飛車穴熊になる可能性はかなり減る。しかし、気を抜いてはいけない。若手棋士で大流行している端歩突き穴熊の可能性は残る。
そして、端歩を突いてこなかったら、相手は居飛車穴熊にするという覚悟を私に示したことになる。それなら、私は用意しておいた策を披露する。
さあ、どうする?
私は、土浦副部長の次の一手を待った。
きっと、先輩は穴熊にしてくる。私はそう確信していた。
彼の次の一手は「▲7七角」。
穴熊を明示した一手。
私が待っていた一手!
「(もう逃がしませんよ、副部長!)」
私は、美濃囲いを放棄した。踏み出すのは新しい一歩。
「△6二金だと!?」
副部長は対局中にも関わらず大きな声をあげる。冷静な彼を驚かせるほどの一手。これで私が今まで愛した美濃囲いは使えない。
狙うのは私が用意した切り札のひとつ!
耀龍四間飛車!
明日はお休みします!




