香IF⑤
私は、電撃マウンテンのアトラクションに乗ることになった。
有名なジェットコースター型のアトラクション。たしか、落下中に写真を撮られることになるんだったよね? まさに、リア充たちの巣窟。
完全にアウェーの中で、私たちは行列に並んだ。いくら、優先券があったとしてもさすがは人気のアトラクション。私たちは10分以上並ぶ。
「ねぇ、桂太くん? どうして、私をデートに誘ってくれたの?」
「なんとなく、香先輩とは、将棋以外で遊んだことがなかったので。たまには、顔も見たかったし、優待券もあったから、ちょっと勇気を出しちゃいました!」
彼はいたずらっ子みたいに笑った。そうだ。私と彼は将棋でしか繋がっていなかった。だから、今日は不思議なんだよ。どうして、私は彼の横にいていいんだろうか?
将棋もしていないのに……
「そういえば、香先輩? 絶叫系、大丈夫ですか?」
「少しくらいなら大丈夫よ」
「よかった、実は俺、あんまり得意じゃないので、変な声を出しちゃったらごめんなさい」
「どうして、乗ろうと思ったのよ!?」
「いや~、かな恵に、ドリームランドに来たら、これに乗らないとダメだって言うから」
「実はね、桂太くん…… 私もあんまり絶叫系得意じゃないのよ……」
「戻りましょうか?」
「そうね、そのほうがいいかもね」
私たちは、高校時代の相性の良さを取り戻した。だが、もう手遅れだった。
「お待たせしました! 二名様ですね、こちらへどうぞ~」
キャストのお姉さんは、無慈悲に私たちを死刑台へと誘導する。
「「あっ」」
私たちは、シートベルトをきっちり締められて、ゴンドラは動き始める。
そして、悲劇は引き起こされた。
加速していくゴンドラ。無くなっていく世界の理。上下すらわからないカオスな世界。
そして、水面へのダイブ。
将棋の難解な終盤のことをジェットコースターみたいとよく言うが、本物はレベルが違った。
もう世界が違う。リア充たちはこれが好きなの!?
案の定、私たちは絶叫を続けて、最後の記念写真はとんでもないことになってしまった……




