香IF➃
「ね、ねぇ、桂太くん? 夢の国で、将棋イベントとかあるのかしら? たしかに、今は将棋ブームだけど、さすがあのリア充大国でそんなことしないわよね?」
「えっ、香先輩、何を言ってるんですか?」
「あるの!? ついに、夢の国でも将棋アトラクションできちゃったの!? あの西洋イメージ全開の場所で!!!」
「いや、だから……」
「ア〇ス世界で、チェスならわかるけど、さすがに将棋は浮きまくりでしょ?」
「あの、センパイ? まさか、夢の国で将棋するんですか? さすがに、それは――」
「えっ、やらないの?」
「やりませんよ!」
「じゃあ、完全にデートじゃない?」
「だ・か・ら、完全にデートですよ!!!」
桂太くんは、そう言って笑った。おかしい、この後輩は私が卒業してから、リア充にでもクラスチェンジしたのだろうか? 普通、高校三年生でそんなことする人いる? 三年生デビューなんてリスクしかないでしょ!!
大学デビューで、私がオシャレするならわかるけど、どうしてこのタイミングなのよ!!
「もう、今日の香先輩はおかしいですよ~ はやくこっちに来てください」
そう言って、桂太くんと私は電車に乗る。目的地は、もちろん、夢の国……
※
「うわぁ、久しぶりに来るとやっぱりワクワクしますね!」
「うん、高校の遠足以来かな……」
「ああ、1年生の冬に行くやつですね! かな恵と葵ちゃんからお土産もらいましたよ!」
「そうそう! そういえば、二人とも元気?」
「もちろんですよ。かな恵は、マイナー戦法をバンバンおぼえてくるし、葵ちゃんは、さらに終盤力を上げています」
「末恐ろしいわね、今の部活は……」
自分が停滞しているのが、どうしようもなく情けなかった。
「さあ、行きましょう! まずは、ファストパスを集めるところからですよ!」
「詳しいわね、桂太くん……」
「かな恵に基礎は叩きこまれましたからね!」
かな恵ちゃん、夢の国信者なのね……
「じゃあ、最短距離で、回りますよ!! ついて来てくださいね!」
彼は、少し見ない間に、男の子になっていた。




