表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

482/531

葵IF⑯

 私たちは2人でお風呂に入った。昨日のいろんな疲れがすべて流れ出ていくようだった。

「昨日は、それでどうだった?」

 かな恵ちゃんは単刀直入に聞いてきた。


「私たち、付き合うことになったの」

「そっか、おめでとう」

「うん、ありがとう」

「じゃあ、昨日は夜遅くまで、イチャイチャしたんだ~」

「う~ん、イチャイチャというか……」

「え、もしかして、それ以上のこと?」

「そっちじゃなくて……」

「もしかして、兄さん、緊張しすぎて、元気にならなかった、とか?」

「違うよ、かな恵ちゃんのばーか」

「だって、付き合ったばかりの二人が一つ屋根の下だよ? そりゃあ、そっちも考えるというか」

「それどころじゃなかったんだよ。私も泣き出しちゃったりしたし」

「そりゃあ、あんなに頑張っていたんだから、愛が実ったら涙の一つや二つ出るでしょう?」

「それはそうだけどさ」

「ふたりとも、変なところで奥手なんだよな~」

「……」

 私は恥ずかしくなって、お湯に潜りかける。


「心の底から祝福したいんだけど、やっぱりダメだね。どうしても、葵ちゃんに嫉妬しちゃう」

「かな恵ちゃん……」

「みんなには内緒にしていたけどね、私、兄さんに告白したんだ。全国大会の後すぐに」

「……」

 なんとなくは察していたことだ。そして、結果もわかっている。


「でも、ダメだった。その瞬間、私たちは本当の意味で家族になった、ううん、なってしまった。もうすでに、兄さんの心の中には葵ちゃんがいたんだね。やっぱり悔しいよ」

 黒い髪を濡らしながら、かな恵ちゃんは私の肩にすがりついた。

「ごめんね、かな恵ちゃん」

「謝ったら、ダメだよ。そのほうが悲しくなる」

「ごめん」

「だ~か~ら~」

 そう言って、私たちは二人で泣きながら笑った。


「葵ちゃん、将棋しよ」

「えっ?」

「私に勝ったら、兄さんのこと、本当にあきらめてあげるから、ねっ?」


 ここで逃げるわけにはいかない。

 私は、最強のライバルの提案にうなづいた。

次回は明日の23時ごろです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ