葵IF⑮
朝が来た。
状況を説明しよう。
「ふたりの朝なう」
以上です。
いや、本当に何もなかったんですよ。ただ、一緒に添い寝しただけ。年頃の男女として、それでいいのかと言われてしまうと、何も言えないんだけど……
でも、今日は私の人生の中で、一番幸せな朝だった。
嬉しすぎて、何度も起きてしまった。桂太先輩も同じようだ。
今は朝の5時半。
ちょうど露天風呂が開く時間だ。
「葵ちゃん、どうしたの?」
私が布団の中で動いていると、彼が目を覚ましてしまったようだ。
「ごめんなさい、桂太さん。ちょっとお風呂行ってきますね」
「ああそっか。いってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
私は、愛しの彼氏と離れてしまうことを少しだけ気にしながら、露天風呂に向かった。
私が脱衣所で服を脱ぎ、お風呂に向かう。露天風呂には、ほとんどお客さんはいなかった。
ひとりだけ先客がいた。
湿らせた長い黒髪。
同性でもうらやむほどの美しいからだ。
そして、私の親友でもある。
「やっと来たわね、葵ちゃん……」
「かな恵ちゃん――まさか、待っていたのは?」
「うん、いろいろ聞きたくてね。一緒にお風呂入ろ?」
かな恵ちゃんはいろんな覚悟を固めてここにいたことがよく分かる。ならば、私も最強のライバルの気持ちに応えなくちゃいけないだろう。
「うん、全部話すよ。だから、かな恵ちゃんも全部話してね」
「もちろん」
こうして、私たちの最終ラウンドがはじまった。
次回は明日の23時ごろです。




