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葵IF⑨

「桂太先輩、今頃何してるのかな」

 私は、お盆期間で完全に部活が休みになったことで、先輩との接点を失っていた。今年の夏は、家族で温泉旅行。だから、私はお母さんと一緒に温泉に入り、ゆったりしている。


「本当に葵は、いつも桂太先輩のことばかりなんだから」

 隣でお母さんが私を茶化す。


「うるさいな~好きなんだからしかたないでしょ」

「本当に、葵は彼が好きなのね」

「何度もそう言ってるじゃない」

「ふふ、相手がいない時に――遠くにいる時に、相手のことを考えてしまう――相手の今を想像してしまうのは、"本物"よ。悩まなくていいわ」

「そこは悩んでないもん」

「そうよね、知ってた」

「お母さん、あんまり茶化すと怒るよ」

「そうじゃなくてね――いま、そうやって悩んでいることが、いつか本当に貴重な財産になるわ。好きなこと、好きなひとのために悩めるって、ある意味では本当に素敵なことだから。だから、お母さんはね、あなたに悩んで悩んで、そして、見つけて欲しいのよ。あなたがどう生きるのかを。それがうまくいくかどうかは、誰にもわからない。でも、悩めば悩むほど、本物には近づける。私は、そう思っているのよ」

 お母さんはそう言って笑った。


「うん、頑張る」

「頑張ってね」

 私たちはそう短く言ってお風呂を終えた。


 お風呂から出てきた私を待っていたのは……


「おお、我が孫よ。どうか、じいじの仇を取ってくれ。将棋コーナーにめちゃくちゃ強い男の子がいるんだ。あいつに一泡吹かせたいから、ボスやっちゃってください」

 ある意味では、いつもの現実だった。

次回は金曜日の23時ごろを予定しております。

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