表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

470/531

葵IF➃

「よろしく。おれは、佐藤桂太。二年生。きみの名前は?」

「あっ、わたしは、源葵です。一年生、あっ当たり前か。えーとっ」

「じゃあ、源さん。簡単に将棋で遊んでみようか? 駒の動かし方とかわかる? 段位とかもってる?」

「おじいちゃんに教えてもらって、簡単に駒の動きくらいは……。でも、時々間違えるし……」

「10枚落ちで遊ぼうか。間違えてもいいから、リラックスして遊ぼう」

「は、はい」


 ※


 花火大会の後、私は桂太先輩との最初の日のことを思いだしていた。

 彼のことをいつ、本当に好きになったんだろう。


 最初から、好きだったと思う。少なくとも優しく将棋を教えてくれたから好感度は最初から高かったのは間違いない。


 自分の練習もあって忙しいのに、私の練習に付き合ってくれたことも……

 一緒にたくさんの詰将棋を解いた。


 彼といっしょにいることが、私の日常になった。

 そして、いつの日にか気がついてしまった。


 私は、彼のことが――桂太先輩のことが大好きなのだと……


 ※


「私は、そのなにげないところに惹かれたんです。自然と誰にでも優しくできてしまうところが好きなんです。その何気なさが、私にとっては一番大事なんです。だから、私の大好きなところを、自分で否定しないでください」


「私は先輩が好きです。将棋で、見たこともない世界に連れていってくれる先輩も好きです。でも、一緒に普通のことをして、普通に楽しめるところが一番好きなんです。だから、ずっと先輩といっしょにいたいんです。私と、付き合ってください」


 ※


 この気持ちは、まだ変わっていない。

 花火大会中は、私たちの手は繋がったままだった。


(大好きです)


 私は、繋がれた手のもう片方にそう念じた。

 彼の手は、力をこめて握り返してくれる。


 伝わったのかな。伝わったらいいな。

 伝わって欲しいな。


 私も彼の大きな手を握り返す。


 世界からは音が消えてしまったように感じる。たくさんの人がこの会場に入るはずなのに、雑音は私の心臓の音でかき消される。


 最後の大花が空に舞った。

次回は9日の23時を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ