第四百四十六話 才能
「さあ、ついに全国高校将棋大会も、最終日です。本日の解説も、初日に続き王竜にお越しいただきました。本日もよろしくお願いします」
「はい、お願いします」
「それでは、視聴者の皆さんもご覧になった初戦の豊田政宗くん対相田美月さんの対局を振り返りをお願いいたします」
「二人の対局は、案の定とも言っていいと思いますが、角換わりになりました。この戦型では、おそらく相田さんと互角に戦うことができるのは、アマチュア将棋界でも、豊田くんしかいないと思います」
「豊田くんが早繰り銀にしたのが驚きましたね」
「はい、角換わりには三すくみの関係があると言われていますね。早繰り銀には、腰掛け銀が有利と言うのが定説です。相田さんは、その定説に従って、腰掛け銀を採用しましたね」
「豊田くんは、どうしてあえて不利な戦術を採用したんでしょうか?」
司会は不思議そうな顔で、王竜に問いかける。
「彼は、先週の団体戦でも見せたように、定跡--つまり、将棋界の常識に挑戦しようとしているのだと思います。最近では、腰掛け銀に対して、早繰り銀で互角に戦える手順が見つかりはじめています。ふたりがそれを知らないわけがない。豊田君は、全国という大舞台を使って、将棋の新しい秩序を作ろうとしているのかもしれません」
「……」
「そして、この7九玉を急いで、5筋の歩を突くのが、彼の結論でしょうね。彼の凄まじい研究が、アマチュア最強の解析者をも上回りました」
そして、王竜は、その後の手順を再現して、ため息をついた。
「まさに、怪物です。彼の才能は、名人にも届きうるとしか言いようがありません。どうして、彼のような存在が、アマチュアに留まっているのか。もはや、冗談のようにしか思えません」
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個人戦が終われば完結ですので、よろしくお願いします。




