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第四百三十六話 帰り道

かな恵side


 表彰式を終えて、私たちは帰宅する。

 団体戦で優勝したとしても、私たちにはまだ個人戦がある。だから、打ち上げはそちらが終わってからだ。文人くんや葵ちゃんも練習相手になってくれるので、個人戦までにしっかり自分の将棋を磨かなくてはいけない。個人戦は、どの戦法で行こうか。


 奇襲戦法は、自分の世界で戦えるから好き。個人戦でも、その考えは捨てていない。

 帰りの電車に私たちは乗った。みんな疲れて、眠りにつく。


 私と、兄さんの二人を除いて……


「疲れましたね、兄さん」

「うん」

「優勝できて、よかったですね」

「うん」

 少しだけぎこちない会話になってしまう。


 その理由は、やっぱり決勝での兄さんのいつもとは全然違う指しまわしのせいだ。

 受け将棋とは言え、あそこまで受け潰すのは兄さんの将棋ではなかった。


 勝負に辛すぎる。いつもは本当に、楽しそうに将棋をしていた兄さんが、まるで別人のように……

 苦しそうだった。


「兄さん……」

「わかってるよ。決勝の将棋のことだろ」

「はい」

「あれはいつもの俺の将棋じゃなかった」

「はい」

「俺は変わらなくちゃいけいないから」

「変わる?」

「いつものままじゃ、勝てない」

「豊田政宗さんに?」

「あの怪物に勝つためには、もっと勝負に辛くなくちゃいけない。準決勝の将棋だって、攻めに拘らなければ勝ててたはずなのに……」

「でも……」

「ありがとう、かな恵。慰めてくれるの嬉しいよ。でも、甘えを残していたら、あいつには勝てない。個人戦では、絶対に勝ちたいんだ」

「……」

「この1週間で、俺は変わる。悪いけど、途中で降りる。将棋道場で練習してくるから」

 そう言って、兄さんは、電車を降りて人の波に消えていく。


「そんなの、私が好きな、兄さんじゃない」

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