第四百三十五話 優勝から始まる物語
「ありがとうございました」
私は辛うじて、そう言うと会場を出る。テレビの人がそこに待っていて、私に簡単に何かを聞いてくるのだけど、なんて答えたのかはよく覚えていない。
その後ろにいるみんなしか、目に入らなかったから。
インタビューを切り上げると、私はみんなのもとに走った。
勝ったよ、みんな……
私、勝てたよ……
部長が、私に腕を広げて待っていてくれる。
もう、なにも我慢しなくていいんだ。これで、部長と私が同じチームになるのも最後。だから、最高のプレゼントを渡したかった。そして、それが用意できた自分が……
とても誇らしかった。
「勝てたよ、私、勝てましたよ」
緊張感が爆発する。私は重荷をすべて、会場へと置いてきたようだ。
そして、目からの出た涙が部長の方を濡らした。
「見てたよ。すごかった、相変わらずすごい終盤だった。最高だったよ、葵ちゃん」
「あ……がとう、ざいます」
「うん、無理しなくていいからね。落ち着いてからでいいから」
「は……い」
「うん」
そして、私の肩に顔を埋めた部長も、解放された安堵感だろう。
桂太先輩・文人先輩・かな恵ちゃんも「お疲れ様」と言ってくれた。
みんな、ありがとう。
私は、この部活に入れて、幸せだったよ。
誰かがそう言った。
「私もです」
そう、小さく答えた。




