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第四百二十五話 銀翼と不滅

 銀翼。

 それはネット将棋の一つの伝説だ。


 名前の由来は、ハンドルネームをそのまま和訳しただけ。少し中二病のような気もしなくはないが、それは問題ではない。


 彼女の伝説、それは……

 史上最強クラスの<将棋廃人(ジャンキー)>であること。彼女は、ほとんどの時間で将棋倶楽部48に出入りしている。無職なのかと噂されるほどで、連休中でもあろうものなら、連続72時間ログインを続けて、200局以上の将棋を指していた。


 高レート、つまりほぼプロクラスが集まる集団の中でも高い勝率を誇る。そして、感想戦では毒舌を炸裂させて、相手の心をぽっきりと折っていくのである。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 彼女の集中力は、はっきり言って人外のレベル。何時間続けて将棋を指しても、一手一手がとても丁寧なのだ。まるで、機械のように……

 本来なら、数局指すだけでヘトヘトになるのに、彼女の体力は無限のように尽きない。


 将棋はある意味では体力勝負だ。脳をフル稼働させる状態を常にキープするので、想像以上に体力を消耗する。あまりに凄まじい対局は、将棋ダイエットともいえるほど、体重を減少させる。


 そして、彼女の本質は、ハンドルネームにある駒を使った繊細な攻めにある。

 銀。


 攻めの基本となる駒であり、将棋の成否を占う重要な駒。

 神武(じんむ)以来の天才とも呼ばれた棋士は、銀のことを「営業部長」と称した。銀の序盤での活躍が、どれだけ勢力範囲を広げて、主導権を握れるかに直結するためだ。


 そして、彼女の銀の使い方は、まさに翼のように際立っている。銀が前に進めば進むほど、彼女の将棋は人を魅了して、盤上には羽が舞うように美しい世界が顕現(けんげん)する。


 団体戦最終局なので、振りごまがおこなわれて私が有利な先手を獲得した。

 私は用意した手を指す。


 初手・6八銀。

 私の得意戦法、嬉野流のオープニングだ。


「やっぱり、その戦法か~ 好きだね、kana kanaちゃんは! じゃあ、私も……」


 そして、彼女は、私と同じ手を指した。

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